日立国際奨学財団の出会い

ASEANとの絆

タイやインドネシアなどに、400人を超える
研究者のネットワーク

日立国際奨学財団は、日立創業75周年を記念して、1984(昭和59)年に日立製作所第三代社長の駒井健一郎により設立されました。当時日立の海外事業所はASEANに最も多くあり、駒井は、「日本と隣人であるアジアの国々の関係は今後いっそう重要になっていくだろう。日本とアジア各国が相互理解を深め、共に発展していくには、経済交流を越えた人的交流が大切である。日立らしい貢献として、『技術』を中心としたアジアの若い人材の育成と日本との教育・学術交流を支援したい」と語り、当財団の設立を提唱したのです。こうしたこころざしから、ASEANの大学教員を日本の大学院に招聘する「留学生招聘事業」が始められ、それから30年もの間、タイやインドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、ベトナムの15大学と交流を深め、ASEANでの人材育成とヒューマンネットワークを構築しました。
2015(平成27)年に日立財団へと合併された後も、本事業は「日立スカラーシップ」として受け継がれ、招聘者はこれまでに400人を超えています。

駒井が創設した「留学生招聘事業(現・日立スカラーシップ)」は、当時の他の留学制度とは異なり、ASEANの若い大学教員が日本で博士号を取得し、母国へ帰国した後にそれぞれの母校で後に続く若者たちを育ててもらうことを目的にしていました。慣れない日本での研究に没頭できるよう、生活面も含めた手厚い支援も大きな特徴でした。日立グループ社員によるホストファミリー制度や、研修旅行や日立の工場見学などを通じた招聘者同士の交流もサポートしてきました。こうした充実した研究生活を経て、現在招聘者の多くが母校で教育者・研究者として後進の指導にあたっています。

2017(平成29)年度からは「日立スカラーシップ」は近年のASEANの経済発展や研究レベルの向上など社会情勢の変化を背景に、支援内容を大きく見直し、新しい研究支援プログラムとして生まれかわりました。しかし、創設からの想いである「アジアの人材育成と日本の大学との学術交流・共同研究の推進」は変わらず大きな軸であり、これまで培った人的な学術ネットワークを大きな資産として、駒井がめざした絆は日本とASEANで深く、さらに大きく広がっています。

1992(平成4)年度タイチュラロンコン大学からの招聘者
TEM(透過型電子顕微鏡)の実地操作

1998(平成10)年度マレーシア工科大学からの招聘者 大学での実験指導

2015(平成27)年度 招聘者が日立製作所笠戸事業所にて鉄道車両製造見学の様子