パイオニアトーク Vol.1

AfterTalk

“奥さんも一緒に来られないんだったら、
何でお前はドイツに来たんだ”と、
夫が責められました(笑)

大島: 今、私の研究室にはドイツからの留学生が増えていますが、最近、びっくりしたことがありました。ドイツからの留学生で、日本からの奨学金をもらった人がいました。彼にはドイツのグローバル企業で働いている奥様がいて、ちょうど日本にも支社があるから、彼女も転勤して日本で何年間か一緒に生活したいという希望がありました。彼には奨学金がおりたのですが、奥様には企業からの転勤OKがなかなか出なくて、半年後じゃないと日本に来られないということになったのです。そうしたら、なんと、奥様と一緒じゃないと来たくないと言って、奨学金を断ったのです。2年間の奨学金だったので、半年くらい先に来てもいいのでは、と私は思ったのですが。文化的な価値観の違いなのでしょうね。

荒木: 日本人はある程度は仕方ないと思えることでも、それが必ずしもグローバルに見たら普通ではないことがありますよね。実は私も夫がヨーロッパに3年間単身赴任していたことがあって、そのときには私自身も仕事を辞めて向こうで新たに仕事を見つけようかとも考えたのですが、結果的には夫が単身赴任することになったのです。子供も小さかったので私の方はけっこう大変でした。夫の赴任先はヨーロッパだったのですが、あのとき夫が赴任先で何を言われたかというと、今の先生のお話のまさに逆で、“奥さんが来れないんだったら何でお前は来たんだ”と、すごく攻められたと夫が言っていました(笑)。

大島: 価値観がずいぶん違うのだなと思いましたね。日本では、研究者も単身赴任率が多いですよね。私も結婚した当初は、夫は名古屋で、私は東京だったので、週末婚状態でした、その後、子供が産まれてから3歳位まで、私が東京で、彼が名古屋という生活だったのですが、やはり大変でした。ドイツ人留学生が言うことは、本当によく分かるのですが、私は半年くらいだったらと思ってしまう。奨学金がもらえる貴重な機会はなかなか無いので、私だったらたぶん行っちゃいますね。

荒木: そうですね。そういう意味ではいろいろお国柄もありますね。

大島: このような違いを乗り越えて、これからは世界の人たちと一緒に仕事をしないといけないのでしょうね。研究のスタイルや会社もそうですよね。私が大学院の学生だった頃って、本当に日本人ばっかりで、女性がたまたま私一人という状態でした、しかも、皆同じ年代の20代前半から半ばの日本人男性、同質な環境だと、新しいアイデアはなかなか生まれにくいのではないかと思います。“気付き”につながるきっかけが少し欠ける感じがします。ですから、ジェンダーや国籍も含めてさまざまなバックグラウンドの方がいろいろな形で交流し合うことは、非常に大事だと思います。

荒木 由季子

聞き手

荒木 由季子

株式会社 日立製作所 理事

法務・コミュニケーション統括本部

CSR・環境戦略本部長

<プロフィール>

1983年3月東京大学工学部卒業、1983年4月通商産業省入省。1988年8月米国マサチューセッツ工科大学院(政治学科 政治学科)修了、1998年6月通商産業省機械情報産業局医療・福祉機器産業室長、その後、経済産業省商務流通グループ博覧会推進室長、国土交通省総合政策局観光経済課長、山形県副知事、2012麗水国際博覧会日本政府代表等を歴任。2012年12月株式会社 日立製作所入社、現在に至る。