パイオニアトーク Vol.2

女性の理系進学、最近の状況について

理系の世界では女子は希少な個体です。それは楽しいことです。

玉城 絵美さん

荒木: 女性の理系進学についておうかがいします。先生は心理学や神経学とかいろいろな分野をまたがって広く研究していらっしゃいますが、女性がそういう分野に関わることの楽しさとはどんなことでしょうか?あるいは男性とは違う点は何かありますか?

玉城: 何でもそうだと思いますが、新しい領域で希少な個体になるということはすごく楽しいことで、今理系の、特に工学系の領域では女性は珍しい個体なのです。珍しい個体だと何が楽しいかというと、多様性のひとつになれるというところです。多様性のひとつになると、話す人皆が自分と全く違う価値観を持っている人になります。そうした自分と異なる価値観に触れることで自分の知見も増えますし、逆に相手の知見も増えます。全然違う価値観を持っている人と話をすると、そんな感じで新しい知見がどんどん増えて、レベルも高まっていきます。そうすると自分も活躍できるし、相手も活躍できるようになる。そういうことが、すごく楽しくて良い点ですね。この点は、「タカ‐ハトゲーム」というゲーム理論が分かりやすいと思います。ハトがいっぱいいる中でタカが来ると繁殖して一旦タカが増えるのですが、タカがたくさんになるとハトがいないからどんどん減少していく。今、もしかしたら女性にとって工学分野は特に大学院に進んでいく中では慣れないかもしれませんが、そこで自分しか持ってない価値観、自分が何かしら強みになれる価値観をもてる可能性が高いですね。誰もまだ入っていないときに入るのはすごく価値のあることです。研究用語では「タカが入って来た」、マーケティング用語では「ブルーオーシャン」というふうに言いますね。

荒木: 女性にとってはとても励まされるメッセージです。もうひとつ、先生はディズニー研究所にインターシップで行かれていたとお聞きしているのですが、そちらでは女性の研究者はどういう感じでしたか。やはりアメリカでも日本と似たようなところがあるのか、あるいは男女差はあまりなく皆活き活きとしている感じでしょうか。

玉城: そうですね。比率としては日本と同じで女性の方が少なかったですけれども、マネージャーの比率は男女で同じでしたね。日本と大きく違っていたのは、マネージャーに多様性があることです。そうするとチーム全体で色々な見方ができるようになります。男性のマネージャー、女性のマネージャー、若いマネージャー、年を取ったマネージャー、そのようにマネージャーに多様性があったので、いろいろな視点から働く人を見てくれました。そうするとチームワークがとても良くなるのです。その経験から、私の会社でも、同じ年代、同じ性別、同じ価値観の人だけではなくて、いろいろな考えを持った人やマネージャーを入れたいと思います。

荒木: 多様性がチームワークを良くするし、新しい考え方もいろいろ生まれる。それはどこの組織でも同じかもしれませんね。

玉城: おそらくそうでしょうね。いろいろなマネージャーから仕事の面だけでなく、生活面までさまざまな話をしてもらいました。仕事で煮詰まっていた時は、「今のあなたはジムに行った方がいいんじゃないか」というアドバイスももらいました。そのマネージャーはトレーニングが好きなマネージャーで、気晴らしになるからジムに行ってきてくれと。

荒木: 面白いですね。

玉城: マネージャーによっては遊びに行った方が良いかもしれないとか、ボーリングに行った方がとかアドバイスくれる方もいました。

荒木: なるほど。日本の大学はどうでしょうか。

玉城: 日本の大学も多少ですが女性教員が増えてきています。外部から大学の教授だけではなくて社会経験がある人も入れるようになりました。違う分野の人を入れることで多様性も少しは出てきており、そういう学部や学科は勢いがありますね。

荒木: 日本でもまだまだこれから頑張れるという感じですね。

玉城: 頑張れると思います。女性による多様性だったり、年代による多様性だったり。

荒木: バックグランドの違いとか。

玉城: そうですね。どんどん受け入れてほしいですね。