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公益財団法人 日立財団

「環境サイエンスカフェ」講演録

第1回 「気候変動の科学・その1」−地球の気候はどのように制御されてきたか?−

日時・会場 2011年2月23日(水) サロン・ド・冨山房 Folio
講師 多田 隆治さん(東京大学大学院 理学系研究科 教授)
内容 私たちが快適に暮らすことができる現在の安定した環境が出来るまでに、地球の表層では何が起こり、その環境はどのように進化してきたのでしょうか?実は、そうした過程のかなりの部分は、偶然の結果ではありません。地球は、変化を抑えて自らを安定に保とうとしたり、別の安定状態にジャンプさせようとする機能である「負や正のフィードバック機構」を備えています。
地球環境とは?言葉にするとひと言ですが、その中身は地球そのものの活動、大気や海の動き、化学反応、そして私たち人間を含む生物の活動など、さまざまな要因が複雑に絡み合って構成されています。そのため、「気候変動」や「温暖化」のメカニズムを理解し、その問題を根本的に解決するためには、地球を一つのシステムとして理解することが必要です。
(その1)では、46億年の地球表層環境進化の歴史を紐解きながら、「フィードバック機構」とその限界についてお話しいただきます。

第2回 「気候変動の科学・その2」
−地球は回り気候は変わる:ミランコビッチ・サイクルと氷期−間氷期−

日時・会場 2011年4月27日(水) サロン・ド・冨山房 Folio
講師 多田 隆治さん(東京大学大学院 理学系研究科 教授)
内容 地球の歴史の中で、南極や北極に氷床が存在する氷河時代は数億年の周期で繰り返しています。現在を含む過去3500万年間はそのうちで最も新しい氷河時代で、特に500万年前以降は、両極に氷床が存在する地球の歴史の中でもまれな氷河時代です。
しかし、私たちには、現在が氷河時代であるという実感はあまりありません。それは、現在が、氷河時代の中の、間氷期と言われる比較的温暖な時代だからです。2万年前の地球は、ニューヨークの辺りまで氷床が広がった極寒の世界でした。こうした時期は氷期と呼ばれます。
この様な氷期と間氷期は、過去300万年に渡って、10万年や4万年、2万年の周期の組み合わせで繰り返した事、そして、こうしたリズムが、地球が太陽の周りを回る軌道や地球の自転軸の向きや角度の周期的変動に同調している事が、海洋堆積物の研究から明らかにされました。
(その2)は、氷期―間氷期の周期的繰り返しが、地球の自転や公転軌道の周期的変動によってどの様に引き起こされたのかをお話ししようと思います。

第3回 「気候変動の科学・その3」
−大気中のCO2濃度はどう制御されてきたか?:深層水循環と生物ポンプ

日時・会場 2011年6月22日(水) サロン・ド・冨山房 Folio
講師 多田 隆治さん(東京大学大学院 理学系研究科 教授)
内容 地球の歴史の中では氷河時代が繰り返し訪れ、その中で氷期と間氷期が数万年の周期で繰り返されていたことが解ってきました。そして、この氷期‐間氷期のサイクルに伴って大気中のCO2濃度の変化が起こっていることも解ってきました。
氷期‐間氷期サイクルの変動を増幅する重要な役割を果たしているCO2濃度の変化は、いったいどの様にして引き起こされているのでしょうか?実は、これには海洋の存在が深く拘わっているのです。海洋には大気中の約50倍のCO2が溶け込んでいますが、その量は、溶解ポンプ、生物ポンプ、炭酸塩ポンプと呼ばれている3つのポンプによって制御されています。この3つのポンプの働きが、大気中のCO2濃度をコントロールしているのです。(ただし、これに加えて、陸上生物圏の大きさの変化も影響を及ぼします。)
では、こうした3つのポンプの働きは、何によって変化するのでしょうか?実は、海洋の深層水循環が大きな役割を果たしている事が、段々と解ってきたのです。
(その3)では、溶解ポンプ、生物ポンプ、炭酸塩ポンプと呼ばれる3つのポンプについて説明し、その起源と働きについてお話したいと思います。

第4回 「気候変動の科学・その4」
−Day After Tomorrow の世界:急激な気候変動とそのメカニズム−

日時・会場 2011年8月31日(水) サロン・ド・冨山房 Folio
講師 多田 隆治さん(東京大学大学院 理学系研究科 教授)
内容 グリーンランド氷床コアの分析の結果、今から7〜1万年前の最終氷期〜融氷期にかけての時代には、数百年から数千年に一度の割合で、急激な気候変動が繰り返されていた事が明らかにされました。その変動は、わずか数十年〜数年の間にグリーンランドの年平均気温が10度以上変化するほど急激なものでした。
10度の年平均気温差というのは、東京と稚内の差に匹敵します。こうした最終氷期における急激かつ大振幅の気候変動は、少なくとも北半球全域に及んでいました。そして、その変動の原因には、北大西洋グリーンランド沖で形成される深層水に駆動されたグローバルな深層水循環による緯度方向の熱輸送の変動が深く関与しているのです。そのメカニズムはまさしく、映画「Day After Tomorrow」のアイデアの原点なのです。
人類は、後氷期(過去1万年)に文明を花開かせました。後氷期という時代は、氷期―間氷期が繰り返す過去250万年間の中で、例外的に気候が安定した時代である事が、古気候記録の解析結果から明らかになってきました。過去250万年の中にあっては、急激な気候変動を繰り返す方がむしろ普通な状態なのです。進行する地球温暖化に伴って、急激な気候変動が起こる可能性はあるのでしょうか?
シリーズ第4回目は、古気候データが語る地球の未来について、お話ししようと思います。

第5回 「気候変動の科学・その5」
−太陽活動と気候変動:太陽から黒点が消えた日−

日時・会場 2011年10月26日(水) サロン・ド・冨山房 Folio
講師 多田 隆治さん(東京大学大学院 理学系研究科 教授)
内容 地球における気候変動の歴史を見ても、大気中の二酸化炭素濃度が気候変動(特に温暖化や寒冷化)を引き起こす主要因である事は、疑う余地のない事実です。しかし、気候変動を引き起こす要因は、それ以外にはないのでしょうか?放射平衡の式を見ると、地表気温を制御する他の要因として、太陽放射量やアルベドの変動などが考えられます。しかし、1979年からの人工衛星による太陽観測の結果、太陽活動の指標と言われる黒点数の変化に伴う太陽の放射量変動は僅か0.1%に過ぎず、直接的に地球の平均地表温度を変えるにはその値は小さすぎる事が示されました。一方、地球の古気候記録は、太陽活動に伴って気候変動が起こっていた可能性を示唆しています。
この矛盾は、いったい何に起因するのでしょうか?今回は、太陽の明るさが、どの位変動しうるのか、地球のサブシステムの中に太陽活動の信号を増幅する機能を持つものがあるのではないか、という視点から、太陽活動が地球の気候に及ぼす影響について考えます。また、太陽活動による気候変動か大気中二酸化炭素濃度の変動による温暖化かといった二者択一の短絡的な議論がありますが、その危険性についてもお話しできればと思います。

第6回 「新しい地震の科学」

日時・会場 2011年11月23日(水・祝日) 国立科学博物館 日本館講堂
講師 木村 学さん(東京大学大学院 理学系研究科 教授、「かなめ」プロジェクト代表)
内容 2011年3月11日に発生した東日本大震災の原因は、宮城沖の日本海溝で発生した地震と津波でした。地震の発生を天気予報のように事前に知る事は、現代の科学では残念ながらはなはだ困難です。
しかしながら、地震の発生を科学的に理解し、防災や減災につなげようとの必死の努力が続いています。本講演では西南日本の南海トラフという海溝を対象として現在進められている前人未到の研究を紹介します。地球深部探査船<ちきゅう>による超深度掘削によって、地震と津波を引き起こす海溝下の断層を直接観察・観測しようという研究です。

第7回 「異常気象と気候変動」大雨・干ばつ・台風・ハリケーン−観測事実と予測−

日時・会場 2012年2月22日(水) サロン・ド・冨山房 Folio
講師 釜堀弘隆さん(気象研究所 気候研究部 気候5研究室長)
内容 「異常気象」とは、30年に一回程度の頻度で発生する極端気象現象をさす用語です。
近年、大雨や干ばつなどの異常気象が話題を集めています。大雨と干ばつと言うと相反する現象のように見えますが、観測によれば両方の頻度が増えている事が分かっており、いずれも人為起源の気候変動(地球温暖化)と密接に関係していると考えられています。さらに、地球温暖化のコンピュータシュミレーションによると、今後も大雨・干ばつの頻度が増加すると予想されています。
今回の環境サイエンスカフェでは、大雨や干ばつ、また台風・ハリケーン活動など、異常気象に関する観測事実と今後の予測について、気候変動と関連させて紹介します。

第8回 「極域から見る地球温暖化」
−いま、北極や南極の極域の気候や環境に何が起きているのか?−

日時・会場 2012年4月11日(水) サロン・ド・冨山房 Folio
講師 榎本浩之さん(国立極地研究所 気水圏研究グループ 教授)
協力
内容 地球における気候変動の歴史を見ても、大気中の二酸化炭素濃度が気候変動(特に温暖化や寒冷化)を引き起こす主要因である事は、疑う余地のない事実です。しかし、気候変動を引き起こす要因は、それ以外にはないのでしょうか?放射平衡の式を見ると、地表気温を制御する他の要因として、太陽放射量やアルベドの変動などが考えられます。しかし、1979年からの人工衛星による太陽観測の結果、太陽活動の指標と言われる黒点数の変化に伴う太陽の放射量変動は僅か0.1%に過ぎず、直接的に地球の平均地表温度を変えるにはその値は小さすぎる事が示されました。一方、地球の古気候記録は、太陽活動に伴って気候変動が起こっていた可能性を示唆しています。
この矛盾は、いったい何に起因するのでしょうか?今回は、太陽の明るさが、どの位変動しうるのか、地球のサブシステムの中に太陽活動の信号を増幅する機能を持つものがあるのではないか、という視点から、太陽活動が地球の気候に及ぼす影響について考えます。また、太陽活動による気候変動か大気中二酸化炭素濃度の変動による温暖化かといった二者択一の短絡的な議論がありますが、その危険性についてもお話しできればと思います。

第9回 「地球温暖化は「怖い」か?」−温暖化リスクの全体像を探る−

日時・会場 2012年6月27日(水) サロン・ド・冨山房 Folio
講師 江守正多さん(国立環境研究所 地球環境研究センター 気候変動リスク評価研究室長)
協力
内容 地球温暖化問題は5年ほど前からテレビや新聞で大きく取り上げられるようになりましたが、シロクマの絶滅といった象徴的なイメージが先行し、そのリスクの深刻さは多くの人にとって曖昧だったと思います。
昨年3月の震災と原発事故により、日本人はより身近で緊急なリスクを目の当たりにし、地球温暖化を考えることの優先度は低下したようです。
しかし、地球温暖化は、このまま忘れてしまってよい問題ではありません。今回のサイエンスカフェでは、科学的な観点と、社会にとってのリスクという観点から、地球温暖化問題を改めて考えます。

第10回 7万本の縞模様と70万粒の花粉−水月湖の土が語る気候変動7万年の歴史−

日時・会場 2012年8月29日(水) サロン・ド・冨山房 Folio
講師 中川 毅さん(英国ニューカッスル大学 教授)
内容 たとえば「2万年前の日本は氷河期だった」と言うとき、なぜそれが2万年前だと分かり、なぜ当時は寒かったと分かるのでしょう。この二つの問いに、福井県の水月湖が世界最高水準の答えを与えます。水月湖の湖底には季節によって違う性質の土がたまり、それが何万年分も乱されることなく保存されています。
一年に一枚づつ形成される薄い地層を、カミソリで削ぐように数えながら分析すれば、気候変動の歴史を比類ない高精度で復元することができます。原理は単純でも膨大な作業を実行したグループの、6年におよぶ活動の記録を報告します。

第11回 2011年タイの洪水−モンスーンアジアの自然と人間を考える−

日時・会場 2012年10月24日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 松本 淳さん(首都大学東京 都市環境学部 教授)
協力
内容 2011年夏から秋にかけてタイのチャオプラヤ川下流を襲った洪水は、現地に多数進出していた日本企業の工場等にも多大な浸水被害を与え、サプライチェーンの分断などが起こって日本経済にも大きな影響を及ぼしました。
本講演では、そもそも洪水とは何なのか、なぜ昨年にこのように大規模な洪水がタイで起こったのかについて、アジアモンスーンや河川の状況などから説明していきます。そしてモンスーンアジアの自然の中で、私たちはこれからどう生きて行ったら良いのかを、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

第12回 謎の深海生物チューブワーム−共生進化を通して生命の本質を探る−

日時・会場 2012年11月21日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 長沼 毅さん(広島大学大学院 生物圏科学研究科 准教授)
内容 海底火山に生息するチューブワームという深海生物はれっきとした動物なのに口も胃腸も肛門もない、何も食べない動物である。チューブワームの細胞内には微生物が共生し、火山ガス成分をエネルギー源として二酸化炭素から有機物をつくる、すなわち、植物の光合成と同じ「独立栄養」を営むことで宿主生物を養っている。ここにふたつの生物学的意義がある。ひとつは光合成でない独立栄養で生きる動物がいるということ。もうひとつはこの微生物が「ミトコンドリア化」していく新たな細胞共生進化のはじまりかもしれないということだ。

第13回 鳥の渡りと地球環境の保全−世界の自然をつなぐ渡り鳥−

日時・会場 2013年2月13日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 樋口 広芳さん(東京大学名誉教授、慶應義塾大学特任教授)
内容 鳥たちの多くは、毎年春と秋、数千キロあるいは1万キロを超える長距離の季節移動、渡りをします。人は鳥のあとをついていくことができないので、渡り鳥がどこに行くのか、またどのようにして戻ってくるのかを知ることは通常できません。
しかし近年、科学技術の進歩により、人工衛星を利用して渡り鳥の移動を追跡することが可能になりました。本サイエンスカフェでは、この衛星追跡によって明らかになったいろいろな鳥の渡り経路、移動様式、環境利用などについて紹介します。また、それらの研究成果が対象種の保全にどう生かされたのかについてもお話します。

第14回 ナマコ天国−ナマコに学ぶ究極の省エネ生活−

日時・会場 2013年4月3日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Foli
講師 本川 達雄さん(東京工業大学大学院 生命理工学研究科 教授)
内容 ナマコは眼も耳も鼻ももたず、脳もない。ほとんど動かず、逃げも隠れせもずにただゴロンと砂の上にころがっているだけ。これでも捕食者の餌食にならずに済んでいる。エネルギー消費量は他の動物の1/10〜1/100しかない。この無為にして超省エネ生活はなぜ可能なのか。その秘密は「硬さの変わる皮」にあることをお話しする。
彼らの生活が、じつは地上に天国を実現しているに等しいものなのである。何ら面白い行動もせず、可愛くもないナマコという動物を、物好きにも研究し始めた経緯についてもお話ししようと思う。歌もうたいます。

第15回 中国から飛来する越境大気汚染−黄砂、PM2.5、大気汚染−

日時・会場 2013年6月5日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 畠山 史郎さん(東京農工大学大学院 農学研究院 教授)
内容 平成25年1月〜2月に中国の北京を中心とする広い地域でPM2.5 (直径が2.5 μm以下の微小な粒子)が日本の環境基準(1日の平均値で35 μg/m3)をはるかに超える高濃度で観測されたため、日本でもその影響が広く関心を集めた。筆者はここ20年以上にわたり、大陸からの越境大気汚染に関して、飛行機を使った観測を日本と大陸との間の海洋上空や、さらには中国本土上空で行って来ており、また長崎県の福江島や沖縄本島北端の辺戸岬でも地上での観測で大気汚染物質の輸送や変質の過程を解析してきた。これらの結果を含めて黄砂、PM2.5、大気汚染についてお話しする予定である。

第16回 地球温暖化とサンゴ礁−温暖化にもっとも敏感な生態系−

日時・会場 2011年4月27日(水) サロン・ド・冨山房 Folio
講師 茅根 創さん(東京大学大学院 理学系研究科 教授)
内容 熱帯・亜熱帯の海岸を縁取るサンゴ礁は、サンゴなどの生物の石灰質の骨格が積み重なって造られた地形です。サンゴ礁という住処と、サンゴ体内の共生藻がつくる有機物を基盤として、サンゴ礁には海洋でもっとも多様性の高い生物群集がみられます。しかしサンゴ礁は、温暖化による白化、CO2増加による酸性化、海面上昇による水没と、地球温暖化シナリオのそれぞれの要因と密接に関わっており、ホッキョクグマと並んで地球温暖化に対してもっともぜい弱な生態系です。
今世紀2-3度気温が上昇したら、サンゴ礁は衰退してしまうと予想されています。

第17回 水を守りに、森へ−地下水の持続可能性を求めて−

日時・会場 2013年9月4日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 山田 健さん(サントリーホールディングス(株) エコ戦略部チーフスペシャリスト、九州大学客員教授)
内容 サントリーの主要製品である、ビール、ウイスキー、ミネラルウォーターなどは、すべて良質の地下水に依存している。この貴重な地下水を守るために、サントリーでは、全国の工場の水源涵養エリアで「天然水の森」事業を展開している。
日本の森は、今、危機的状況にある。放置人工林、鹿による食害、ナラ枯れ、松枯れ・・・さらには、若い人材の不足。森が荒れ、森林土壌の流失や大規模ながけ崩れなどが起こると、地下水の涵養力は急速に低下する。これらの問題を解決するため、40人を超える専門家との研究体制を組み、一方では各地の森林組合や林業会社と協力して若い人材に育成にも乗り出している。全国の「天然水の森」で進行している研究・整備活動についてお話したいと思います。

第18回 米国シェールガス開発の光と陰−環境リスクの視点から−

日時・会場 2013年11月27日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 藤田 和男さん(東京大学名誉教授)
内容 米国内で新型ガス資源と言われる「シェールガス」の年産量が2005年頃から年4%のペースで急増し、2011年には2,220億立方メートル(日本の天然ガス消費量の2倍に匹敵)に達し、全米ガス生産量の34%を占めるに至っています。しかしその実現には莫大な数のガス井戸が掘られ、地殻を破砕するフラッキングが地球環境の破壊者だというレッテルを貼られないように、今シェールガス革命の光と影に命運が掛かっています。世界一の石油開発150年の歴史を持つアメリカだからこそ可能となった曲芸だと思われ、何時こけるのか危ない側面も指摘したいと思います。
3.11東日本大震災・大津波により「原発神話」が崩れたわが国にとって、CO2排出量が比較的少ない天然ガス(LNG)が、低炭素社会を模索する切り札であるに違いありません。皆さんと環境リスクの視点から米国のシェールガス開発の実態を眺めて見ましょう。

第19回 エネルギー問題の誤解をとく(1)−ロジスティックスと将来像−

日時・会場 2014年1月29日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 小西 哲之さん(京都大学 エネルギー理工学研究所 教授)

・著書紹介:「エネルギー問題の誤解 いまそれをとく」(化学同人出版)
エネルギーなしでは成り立たない現代社会。それゆえに、エネルギーは現代人の誰もが抱える大きな心配事になった。ところが、石油や原発、太陽光などのさまざまなエネルギー源に対する単純化された情報や希望的な言説ばかりに接し、誤ったエネルギー観にとらわれていないだろうか。本書では、いくつものエネルギー源について、作られてから、消費、廃棄までを総合的に分析・評価し、エネルギーのあるべき姿を考える。

内容 現在わが国は、東日本大震災に端を発する原子力発電所の停止に伴って電力供給への不安を抱えています。さらに、地球環境問題、化石燃料の有限性、急速に発展しつつある途上国のエネルギー需要の拡大からは、長期的なエネルギー需給は人類の生存をかけた大問題です。
しかし、資源と供給にからむ多くの議論が誤解と危険をはらんでいます。エネルギー問題の本質は、「必要な時に必要なところで使えるのか?」という点にあるのです。
安定にエネルギーを届けるシステム「ロジスティックス」について考えれば、現在のわが国、さらには遠い将来の人類全体について、問題の構造と対応が見通せるようになります。ヒントになる技術や情報はすでに存在しています。
専門知識も複雑な計算も必要なく、思い込みにとらわれずにエネルギーの取り出しから需要者の立場、後始末までを考えればよいのです。ここでは、化石資源、再生可能エネルギー、原子力などいくつかのエネルギーシステムの分析をとおして、現在と将来のエネルギーと社会を、一緒に考えてみましょう。

第20回 エネルギー問題の誤解をとく(2)
−人と環境へのリスクと費用:原子力と再生可能エネルギーの例を通して−

日時・会場 2014年4月9日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 小西 哲之さん(京都大学 エネルギー理工学研究所 教授)
内容 エネルギーは、消費者の手元に届けられる部分だけではなく、原料となる資源や発生源から、使うまでの経路、副産物、使い終わった後の後始末やそれら一連の道具立ても含めたシステムで成り立っています。そのすべての過程で、直接代金を支払うだけでなく、さまざまな影響を社会や環境に及ぼし、その費用は生産者や消費者だけでなく、直接関係のない人まで含めた、さまざまなところで負担されます。直接目にしなくても、健康被害や人命、環境汚染など、貨幣で換算できないようなものまで、そして遠く離れた地域や遠い将来にまで、エネルギーの影響は及びます。
また逆に、現在の社会は、かなり昔のわが国や人類のエネルギーに関わる選択の結果でもあり、恩恵も弊害も含めて、後戻りの難しい影響を受けています。実は火を使い始めた遠い昔から、エネルギーには恩恵とともにリスクはついてきており、私たちはより多くの利便と幸福を得る一方で、必ず犠牲にしてきたものがあります。ここでは、原子力と再生可能エネルギーを実例に、エネルギーの及ぼす影響を考え、人類の持続可能な発展を支えるエネルギーとは何なのか、ご一緒に考えてみましょう。

第21回 生物多様性はなぜ大切か−「私」とは何かを通して考える−

日時・会場 2014年7月9日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 本川 達雄さん(東京工業大学 名誉教授)
内容 生物多様性がなぜ大切かについて、(専門でもないのに)講演をいくつか頼まれました。そこで巷に出ている本を山ほど読んでみたのですが、なぜ大切か、納得のいくように書かれているものには出会えませんでした。しょうがないので自分なりに考えることにしたのです。
「なぜ大切か」とは価値の問題です。価値を与えるのは(もし神を持ち出さないなら、そして科学は神を持ち出しませんから)私なのですね。私にとって多様性はどんな価値があるかを生物学的に考え、それをもとに、独断と偏見に満ちた多様性論をお話しします。

第22回 砂漠化問題と向き合う−西アフリカにおける地域開発と砂漠化抑止−

日時・会場 2014年9月3日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 田中 樹さん(総合地球環境学研究所 准教授)
内容 アフリカ半乾燥地での砂漠化問題は、資源・生態環境の劣化にとどまらず、貧困問題と不可分に結びついています。
砂漠化問題の深刻さは、地域の人々の暮らしを支える農耕や牧畜、薪炭採集などごく日常的な生業活動により引き起こされる点にあります。原因を維持しながらの対処となるため人々の暮らしの実態と対処技術との親和性を高め、暮らしの安定や生計向上に資する生業活動を通して、結果として資源・生態環境の保全や砂漠化抑制が図られるような工夫が必要です。地球環境学を「実学」として捉える研究者らと地域住民の取り組みを紹介します。

第23回 水をめぐる地球環境問題 その1−世界の水問題を衛星で見る・現場で見る−

日時・会場 2014年10月22日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 谷口 真人さん(総合地球環境学研究所 教授)
内容 現人が生きる上で、欠くことのできない「水」は、少なすぎても多すぎても問題を引き起こします。水をめぐる地球環境問題は、洪水や渇水などの災害を始め、人と水の時間空間分布のアンバランスが主な原因といえます。
最近の衛星データは、穀物生産に大量の地下水が汲み上げられているインド・中国・アメリカにおいて、陸水の量が大きく減少していることを教えてくれます。また一方、現場で発生している水問題は、水質、健康、生業など様々な分野と関係しており、資源・循環・環境基盤・安全・文化の側面から考える必要があります。水をめぐる地球環境問題を、グローバルとローカルの両面からお話しします。

第24回 水をめぐる地球環境問題 その2−水・エネルギー・食料のつながり−

日時・会場 2014年12月10日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 谷口 真人さん(総合地球環境学研究所 教授)
内容 地球上での人口の増加とライフスタイルの変化により、水・エネルギー・食料の需要が今後ますます増大するといわれています。一方で、水とエネルギーと食料はそれぞれ依存関係にあり、水の輸送に大量のエネルギーが使われるばかりでなく、エネルギー生産のために発電所の冷却などに大量の水が使用されます。また食料とバイオエネルギーの競合や、食料生産にも大量の水が使用されます。
このようにどちらかをとるとどちらかに影響を与えるトレードオフの関係にある3つの資源を、今後どのように開発・管理していけばよいのでしょうか?地域、国、地球規模での水とエネルギーと食料のつながりについてお話しします。

第25回 巨大津波−歴史・先史時代の津波痕跡を探る−

日時・会場 2015年2月4日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 後藤 和久さん(東北大学災害科学国際研究所 准教授)
内容 日本の沿岸部は、過去に繰り返し巨大津波の被害を受けてきました。歴史の長い日本では、約1300年分の地震や津波の記録が残されています。しかし,2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震・津波のような巨大災害は、数百年から千年に一度程度の低い頻度で発生すると言われています。そのため,過去の巨大津波の履歴や規模を知るためには、歴史記録のない先史時代にまで遡って研究を行う必要があります。
今回の講演では、私が専門としている地質学的な調査により明らかになりつつある、日本沿岸の過去数千年間の巨大津波履歴について紹介します。

第26回 超巨大地震の科学−沈み込み帯で何が起こっているのか−

日時・会場 2015年4月8日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 纐纈 一起(こうけつ かずき)さん(東京大学地震研究所 教授)
内容 関東大震災を引き起こした地震以上のマグニチュード(M)を持つ地震は巨大地震と呼ばれています。わが国で最初の地震観測網ができた1885年以降、15個の巨大地震があり、最大のものでもM 8.2でした。それ以前でも江戸時代に起きたM 8.6の宝永地震が史上最大の巨大地震でしたので、M 9.0の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災を引き起こした地震)は超巨大地震と呼ぶしかない、科学者にとっても想定外の地震でした。
今回の講演では、この超巨大地震を契機に、巨大地震の源であるプレート沈み込み帯に対する科学がどのように変わったかをご説明したいと思います。

第27回 【シリーズ:気候変動の影響(1)】温暖化の過去と未来−異常気象と不確実性−

日時・会場 2015年6月10日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 塩竈 秀夫(しおがま ひでお)さん(国立環境研究所 地球環境研究センター 主任研究員)
内容 熱波や大雨などのニュースを目にしたとき、「これは温暖化のせいだろうか?」という疑問を抱くのではないでしょうか。また「将来は、もっとひどくなるのでは」、「いやいや遠い先の話で自分には関係ない」といったことも考えるのではないでしょうか。
「気候変動の影響を考える」シリーズの初回は、人々の暮らしに影響を与える気候や異常気象が、産業革命以降どのように変化してきており、それに人間活動がどのように寄与してきたか、また将来どのように変わっていくのかに関する研究を紹介します。気候変動を科学する際には、必ず不確実性がつきまといます。最新の研究が、不確実性にどのように立ち向かっているのかに関しても、紹介します。

第28回 【シリーズ:気候変動の影響(2)】温暖化による世界の氷河融解
−海面上昇と水資源への影響−

日時・会場 2015年7月29日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 平林 由希子さん(東京大学大学院 工学系研究科付属総合研究機構 准教授)
内容 近年、アジアやヨーロッパなどの世界の多くの氷河が融けて小さくなってきていることが報告されています。地球温暖化が進み、このまま氷河が融け続けるとどうなるのでしょうか?氷河の融解は、一時的には融け水の増加により洪水や雪崩のリスクを増幅させ、長期的には氷河が消失することで下流の水資源を不足させます。また、氷河からの融け水は、海水面上昇の大きな原因の1つとなることもわかってきました。
今回の環境サイエンスカフェでは、観測や数値シミュレーションから明らかになってきた過去から将来の氷河の変化と、その海面上昇や水資源への影響について紹介します。

第29回 日本の温室効果ガス削減目標−家庭・業務部門における温暖化対策−

日時・会場 2015年9月16日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 土居 健太郎さん(環境省 地球温暖化対策課長)
内容 我が国の温室効果ガスの2030年削減目標[2013年度比26%削減]は、「国際的にそん色のない野心的であって」かつ「エネルギーミックスと整合性があり、裏付けのある実現可能なもの」であり、関係者が一致団結して全力を挙げて取り組むことではじめて達成できるレベルです。
この目標を達成するためには一人当たり排出量を11トン(2013年)から8.9トンへと20%削減。エネルギー効率も1970年から90年の改善ベースに匹敵する35%改善。2030年には自動車の半分を次世代型にし、高効率給湯器を4600万台導入し、LED等の照明を100%普及させていくなどの積み上げが必要とされます。

第30回 【シリーズ:気候変動の影響(3)】サンゴから見た世界
−地球温暖化と海洋酸性化−

日時・会場 2015年10月21日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 山野 博哉さん(国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター長)
内容 サンゴ礁は、サンゴによって作られた地形や生態系で、高い生物多様性を持ち、人々の暮らしを支えています。しかし、現在、サンゴはさまざまな環境変動にともなって大きな変化をとげています。サンゴはイソギンチャクの仲間の動物ですが、石灰質の骨格を作るため、地球温暖化にともなう水温上昇だけでなく、二酸化炭素が海水に溶け込んで起こる「海洋酸性化」の影響も深刻であると考えられるようになりました。
今回の講演では、地球温暖化や海洋酸性化を中心に、サンゴにとって気候変動がどのような影響を与えるか最新の知見を紹介し、今後我々がとるべき保全策を議論したいと思います。

第31回 海のデッドゾーン-貧酸素水塊 −温暖化の影響と予測の不確実性−

日時・会場 2016年1月27日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 重光 雅仁さん(海洋研究開発機構(JAMSTEC) 地球環境観測研究開発センター 技術研究員)
内容 サンゴ礁は、サンゴによって作られた地形や生態系で、高い生物多様性を持ち、人々の暮らしを支えています。しかし、現在、サンゴはさまざまな環境変動にともなって大きな変化をとげています。サンゴはイソギンチャクの仲間の動物ですが、石灰質の骨格を作るため、地球温暖化にともなう水温上昇だけでなく、二酸化炭素が海水に溶け込んで起こる「海洋酸性化」の影響も深刻であると考えられるようになりました。
今回の講演では、地球温暖化や海洋酸性化を中心に、サンゴにとって気候変動がどのような影響を与えるか最新の知見を紹介し、今後我々がとるべき保全策を議論したいと思います

第32回 温暖化が陸の生態系に与える影響−モデルシミュレーションが示すもの−

日時・会場 2016年3月16日(水) 18:30〜 サロン・ド・冨山房 Folio
講師 伊藤 昭彦さん
(国立環境研究所 地球環境研究センター物質循環モデリング・解析研究室 主任研究員)
内容 私たちの人間社会は森林などの生態系から色々な恩恵を受けていますが、地球温暖化は生態系に深刻な影響を与える恐れがあります。
生態系は微妙なバランスの上に成り立っており、その将来を予測することは簡単ではありませんが、実験や観測による研究が世界で盛んに行われています。
今回は、生態系の振る舞いを表現するモデルによるシミュレーション研究についてご紹介します。地球上の多様な生態系をどうやってモデル化するか、そして大気CO2増加や気候変動がどのような影響を与える可能性があるかについて、最新の知見を紹介します。