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2018年度(第50回)倉田奨励金贈呈式を開催しました。

2019年3月14日

2019年3月1日、経団連会館において、2018年度(第50回)倉田奨励金贈呈式を開催しました。今年度は全国より226件の応募があり、厳正な審査により決定した30件の研究課題に対して研究助成金を贈りました。
倉田奨励金は、日立製作所第2代社長の倉田主税が提唱し創設した研究助成金で、「エネルギー・環境」「都市・交通」「健康・医療」の3つの分野において、自然科学研究、および自然科学と社会科学の融合研究を対象として助成しています。

2018年度(第50回)倉田奨励金贈呈式 集合写真

倉田奨励金は今年度、節目となる第50回目の贈呈となりました。会場で配布したプログラムには、第1回からの全受領者リストと記録写真を掲載し、冒頭の田中理事長の式辞では長きにわたる皆様からのご指導、ご支援に対する感謝の言葉が述べられました。
続いて大西隆選考委員長から選考経過の報告があり、受領テーマの紹介とともに受領者一人一人に理事長から贈呈書を手渡しました。
その後、文部科学省研究振興局長のご祝辞(千原由幸審議官ご代読)を賜り、受領者代表挨拶として3つの分野と文理融合研究から1名ずつ、4名の受領者よりご挨拶をいただきました。

理事長より贈呈書を手渡し

田中理事長田中理事長

大西選考委員長大西選考委員長

文部科学省 千原審議官文部科学省 千原審議官

受領者代表挨拶

エネルギー・環境分野代表 金沢大学 鳥羽 陽 氏
環境問題は、エネルギーや資源、経済活動と密接に関係しています。我々の便利な生活を支えているエネルギー由来の二酸化炭素抑制と経済の両立といった課題や、自動車排ガスの寄与が大きい都市部の大気汚染問題など、倉田奨励金の助成対象であり我々が取り組むべき社会的要請がある、環境、あるいはエネルギーの課題に対する研究は、きわめて重要なものだと考えます。
その環境問題の中のひとつ、大気汚染に関して、PM2.5という言葉をご存知かと思います。PM2.5 とは、粒子のサイズが2.5マイクロメートル以下の大気中の粒子をさします。近年、PM2,5 の健康リスクを総合的に評価する指標のひとつとして、呼吸器疾患や循環器疾患の発生のリスク要因として考えられている酸化ストレスを引き起こす活性酸素(ROS)の酸性度の測定が行われるようになっています。
しかしながらこの測定は、感度が不十分であるなどの欠点を有しており、私は今回の研究で、高感度で簡便な活性酸素を測定する新しい評価法を開発し、PM2.5 の総合的な健康リスク指標を開発することを目指してます。
環境問題は地球的規模の課題であり、国際的な協力が欠かせないものです。私は、今回ご支援いただく研究課題としましても、国際的な共同研究へ発展させていく所存です。

エネルギー・環境分野代表 金沢大学 鳥羽 陽 氏

都市・交通分野代表 豊橋技術科学大学 林 和宏 氏
わが国の近代耐震工学研究において最も大きなインパクトを与えた災害は、1995年の阪神淡路大震災であると思います。その後、わが国の耐震工学研究は大きく進歩することになり、その成果は、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震に見ることができます。しかしながら、耐震工学の研究成果が着実に社会に実装される半面、耐震工学の更なる発展に対する社会的要求は残念ながら徐々に後退してきていると感じられます。
そのような中にあり、新しい研究キーワードとして近年、着目されているものの一つが情報(データ)です。AI、センシング、ビックデータなどのキーワードが建築・土木分野でも散見されるようになりました。私の研究も、建物に安価なセンサを設置し、地震時の建物の損傷、特に地中にあり直接は目視確認できない杭部材の損傷評価を目指すもので、広い意味では情報に関するテーマです。私は、専門分野の知見を如何にして情報(データ)に結びつけるか、さらに結び付けた情報をどのように解釈するならば新しい付加価値がそこから生まれるか、という点に研究の未来があると考えます。いただいた奨励金を足掛かりに研究を促進・発展させ、次世代の高度情報化社会の一助となれるよう精進してまいりたいと思います。

都市・交通分野代表 豊橋技術科学大学 林 和宏 氏

健康・医療分野代表 名古屋市立大学 服部光治 氏
高齢化社会、あるいは高ストレス社会ともいえる現在、アルツハイマー病や統合失調症などがたいへん増えています。アルツハイマー病や統合失調症のような脳の疾患では、たんぱく質や遺伝子のようなものが重要であると思いますが、脳には脂質、脂がたくさんあります。脳の資質は、他の臓器の脂とは大きく異なっているのですが、なぜ異なっていて、何の意味があるのか、病気の方ではこの脂質組成が替わることが古くから知られていますが、それに何か意味があるのか、これを治せば病気は治るのか、ということはほとんど研究されておりません。これは研究が難しいというのも原因のひとつではあるのですが、我々は最近、共同研究者を含めいくつかの技術を開発して研究を進めることができるようになってきました。
私は、自分のやりたい研究はもちろんですが、学生、後進の育成にも非常に大きな意味があると考えており、これから5年、10年と、後進の育成も含めて基礎研究を続け、現在は治すことが難しいこれらの病気をいつか治るようにしたいと、アルツハイマー病は怖くないよ、治るよという世界が来るように頑張っていきたいと思っております。

健康・医療分野代表 名古屋市立大学 服部光治 氏

文理融合研究代表 京都大学 大垣 英明 氏
我々のチームは、アセアンの非電化地区で再生可能エネルギー導入の住民生活に与える影響の研究をしています。国際共同研究ということになりますが、世界では、貧困対策というのがSDGsの中でも最重要課題であると私は理解しております。
エネルギーフォーオールと言われますが、まだまだアジア、アセアンの中には電気の無いところが多いというのは実際の事実であり、身近なところでも結構不便なところは多くあります。理系的な感覚でいえば、太陽パネルなどをどんどん建ててしまえば良いのですが、現場に行きますと使われていないものがたくさん転がっているんですね。実際は、メンテナンスも含めて非常に難しいのです。この様子を見て、どのように、どうすれば良いのか、と思ったのが研究のきっかけにもなっています。
現状のパネルでは発電量も多くはなく、50ワットのパネルでは冷蔵庫などは動きません。かれらにとっては非常に嬉しい技術なのですが、なぜ動かないのかは理解できません。技術的な問題もあるのですが、こういった理解も含めて、まだまだやるべきことはたくさんあるのです。非常に微力ではありますが、できるだけ若い人も含めて、技術の人たちも含めて、この研究の底上げをしてまいりたいと思っております。

文理融合研究代表 京都大学 大垣 英明 氏

閉会後の記念パーティーでは、倉田奨励金選考委員の佐久間一郎氏(東京大学大学院 教授)より乾杯のご発声をいただき、受領された研究者の皆さんと選考委員、ご来賓の方々が、和やかな雰囲気の中、情報交換など交流を深めていました。
パーティーは研究者同士、また受領者と企業の交流の機会でもあります。
日立財団は、この交流が皆様の研究の更なる発展につながることを願っています。

佐久間選考委員
佐久間選考委員

パーティー1:大選考委員(左)と受領者
選考委員(左)と受領者

パーティー2:田中理事長(右)と歓談する受領者
田中理事長(右)と歓談する受領者

参考リンク

お問い合わせ

公益財団法人 日立財団「倉田奨励金」事務局
〒100-8220 東京都千代田区丸の内1-6-1
電話 03-5221-6677

E-mail:kurata@hdq.hitachi.co.jp