中野 由美子氏

[在籍期間:1978(昭和53)年~2015(平成27)年]

親も子も一緒に育っていく、そういう動きが地域に広がっていきました。

私が駒井さんにお会いしたのは1978(昭和53)年、親子教育の教室が横浜市戸塚区に開設されるときのことでした。
当時は核家族化が進行したことによって、家庭の教育機能が低下し、校内暴力とか家庭内暴力が話題となり、親子間で凄惨な事件も起きていた時代です。
駒井さんは「特に優秀な子どもを育ててくれる必要はない。子どもは年相応に自立できて、ゆくゆくは親子がきちっと分離して親子ともども自立できる、そういう家庭を育てたい」とおっしゃっていました。

この教室で一番大切にしていたのは、何か困ったことが起きたときは同じような悩みを持っている親御さんたちが、私たちスタッフや保育者とともに考え、自分で解決する力を身につけていただくことでした。

「お母さん教室」「お父さん教室」は、幼児教室に参加する子どもたちの両親が対象で、「子育ち」「親育ち」について専門家とともに学び、「自分の子育て」を見つけるプログラムでしたが、父親にももっと積極的に育児にかかわってほしいという声が多く、毎年「お父さん教室」も休日に開催しました。併設された「幼児教室」では、3歳児を対象に友達との遊びを通して社会性を身につける保育を行いました。

このようにして教室で得た様々な経験や知識は、他の親御さんと分ち合っていくのが教室の方針でもありましたから、修了後もそれぞれの地域の幼稚園や保育園、小学校などで積極的に子育て活動に参加される親御さんが増え、親と子が一緒に育っていく、そんな子育てが地域全体に広がっていったように思います。こういった子どもだけでなく、両親や地域のネットワークと連携した幼児教育機関は当時の日本にはない、画期的な存在だったと思います。

<プロフィール>
中野 由美子(なかのゆみこ)
「家庭教育研究委員会」創設メンバーの一人で、神奈川県横浜市に1978(昭和53)年に開設された「日立家庭教育研究所」で主幹研究員として親子教育の実践および研究に携わる。京都大学教育学部教育社会学科卒業、東京大学大学院教育学研究科教育社会学専門課程博士課程単位取得満期退学。
教育学、保育学、社会学、子育て支援を専門とし、目白学園女子短期大学教授、目白大学教授、目白大学大学院生涯福祉研究科講師等を歴任。