図 3.オリセットプラス天井式蚊帳家計を対象とする 20 クラスターにおいて,2021年 10 月に介入前ベースライン調査(学校,コミュニティ),12〜1 月に天井式蚊帳の導入完了(介入:1,247 家計).主たるモニタリング指標は,学童対象の横断的調査(12 小学校,6 か月ごと)によるマラリア原虫感染率(RDT,顕微鏡,PCR),現地に設定した住民コホート(300 人,1 年間追跡)から得られるマラリア発症率,住民意識,および媒介蚊指標である.2022 年 1 月以降はコホートにおける Community Health Volunteer(CHV)による月ごとの血液サンプリングを含めたモニタリングを進めた. Olyset®Plus 天井型蚊帳は 1,006 世帯に設置され,平均カバー率は 93.4%であった.有病率の評価には,対照群で 806 人,介入群で 831 人の小児が参加した.介入 12 か月後のマラリア有病率は,対照群で 30.1%(95%信頼区間:27.1–33.3),介入群で 16.4%(95% CI: 14.0–19.2)であり,有病率比は 0.55(95% CI: 0.33–0.91, p=0.056)であった. 罹患率の評価には,対照群で 206 人,介入群で 266 人が参加した.介入後 12 か月間の追跡におけるマラリア罹患率は,対照群で人年あたり0.11(95% CI: 0.07–0.15),介 入 群 で 0.05(95%CI: 0.02–0.09)であり,罹患率比は 0.47(95% CI: 0.24–0.95, p=0.030)であった. Olyset®Plus 天井型蚊帳は,既存のマラリア対策に加えて,マラリア感染を防ぐ効果を示した.現在 こ れ ら の 成 果 を 受 け,ビ ク ト リ ア 湖 畔 へ のコンプライアンス,コスト,持続性,住民の受け入れなどに問題がありマラリア媒介蚊の制御には至っていない. 我々は,これらの問題を補完すべく新規媒介蚊対策法として住友化学株式会社によって開発された Olyset®Plus(オリセットプラス)の素材を使った天井式蚊帳のフィールド介入試験による評価を主軸に進めてきた.アフリカでは,殺虫剤処理蚊帳の大量配布と屋内残留性殺虫剤散布に伴って,媒介蚊の殺虫剤抵抗性獲得が問題となっているが,オリセットプラスは,殺虫剤抵抗性媒介蚊にも有効な薬剤(ピペロニルブトキシド:PBO)を添加してある.一方,蚊帳が十分に行き届いたとしても,不使用,あるいは不適切な使用によりその効果が損なわれている.この点に関しては,家屋の天井と屋根と壁の間の開口部を蚊帳素材で覆うことで,媒介蚊の侵入を防ぐとともに,殺虫効果により感染伝播を阻止することが可能で,蚊帳を使用しない者も感染から守ることができる.本開発担当者を中心とするチームでは,過去のフィールド介入試験において,通常のオリセット蚊帳の素材を用いた天井式蚊帳によるこのような効果を確認している[Minakawa N et al. 2021].現在,両方の蚊帳を組み合わせた新しい蚊帳(オリセットプラス天井式蚊帳)を開発し,その効果をクラスターランダム化比較試験により検証を進めている(図 3). ムファンガノ島南東部ワクラを中心とする 2,572日立感染症関連研究支援基金 研究成果報告書24
元のページ ../index.html#26