日立感染症関連研究支援基金 研究成果報告書(日本語)
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4.2 南アフリカ:中間層市民への影響と対応 ステレンボッシュ大学を研究協力機関とする南ア・チームは,中間層市民の経験と役割をテーマとして調査を行った.先行研究では,アフリカ大陸で最も深刻な影響を受けた国である南アフリカにおける新型コロナの影響が調査されてきたが,貧困層を対象とする研究が多く,中間層市民の経験については分析されてこなかった.南ア・チームは 520 名を対象とする大規模なオンライン調査と中間層市民 20 名を対象としたオンラインでの半構造化インタビューを行った.その結果,感染数が多かった南アフリカでも,新型コロナは深刻なリスクとは認識されておらず,経済ショックや公共サービスの悪化の方がリスクとして認識されていることが明らかになった.また,興味深い結果として,人々は政府を信頼していないものの,政府の新型コロナ対策は適切であったと評価していた.また,政府が貧困層への支援に注力するのは仕方のないことであると受け入れ,中間層市民は家族や市民社会とのつながりによって困難を克服していた.中間層市民は納税や家族・親戚への支援を提供する側として,社会のレジリエンスを支える役割も担っていた.こうした周囲への支援は黒人中間層に特有の負担(Black tax と呼ばれる)のようだという意見がある一方,助け合いを尊重する Ubuntu の精神から当然だと答える回答者が多く,肯定的な側面が強かった.4.3 ジンバブウェ:農村部と都市部での生活変化 サ ム・モ ヨ・ア フ リ カ 農 業 問 題 研 究 所(SMAIAS)を研究協力機関とするジンバブウェ・チームは,アフリカにおける農村人口の集中を考慮して,主に農村住民を中心とする 175 名への対面聞き取り調査と,69 名が参加するオンライン・フォーカスグループ・ディスカッションを行った.また,都市部の経験と比較することで,新型コロナのリスク認識,政府の封じ込め措置,回復力メカニズム,および主体性が異なる環境でどのように異なったかを包括的に分析した.その結果,ジンバブウェではパンデミックの初期に著名人が感染して亡くなったことが人々にショックを与え,リスク認識を高めることに貢献していたものの,他のリスクと比較すると新型コロナのリスク認識が高くはないことを明らかにした.それでもなお,感染症への注目によって農業リスクへの注目がそがれ,経済的ショックの増大につながるという典型的なリスク・トレードオフが起きていたことを示した.また,人々は政府の対策をめぐって,本来は渡航を制限すべき人が賄賂によって渡航できてしまったために感染源になったり,市場へのアクセスに必要な証明書の発行に賄賂を求められたりするなどの汚職に対しては厳しく批判するものの,政策自体は支持するという二面性を持つことを明らかにした.そしてジンバブウェでも,人々のレジリエンスの源泉は,地域のつながりとインフォーマルな支援ネットワークにあることが明らかにした.4.4 ウガンダ:新型コロナ対策の政治化 ウガンダ殉教大学を研究協力機関とするウガンダ・チームは,172 名を対象とする対面の聞き取り調査を行った.多くの回答者が,パンデミック自体よりも政府による厳しいロックダウンをリスクと認識していることが明らかになった.また,パンデミック中の 2021 年に選挙が行われたことから,ヨウェリ・ムセベニ大統領と与党の国民抵抗運動(NRM)が選挙を有利に進めるために新型コロナ対策を利用したと批判する声が多く上がった.与党の候補が集会を開くときにはコロナなどないようなのに,野党候補が集会を開こうとすると感染対策を理由に取り締まりが行われるといった事態が報告された.それでもなお,2021 年の第 2 波後は,中央政府の厳しい政策がパンデミックを防いだと評価し,その一方で地方政府は有効な対策をしなかったと失望する声が顕著になった.これは,調査を実施した研究者にとっても驚きの変化であった.その要因を分析したところ,半権威主義といわれるムセヴェニ政権による長年の中央集権化政策が,地方政府の対応能力を減退させていたことが,パンデミックによって露呈したという結論に至った.4.5 ケニア & タンザニア:学生の対処戦略としての「ハスリング」 ロヨラ・メディアコミュニケーションセンターを研究協力機関とするケニアとタンザニアの合同チームは,両国では若者の行動が政治的・社会的に大きな影響力を持つため,学生の対処戦略に注目した.100 名からの回答を得たオンライン質問紙調査,171 名への対面聞き取り調査,20 名が参加したフォーカスグループ・ディスカッションを行った.両国ではパンデミックの初期からオンライン学習への移行が始まったが,これはデジタル環境の整備など様々な負担を学生に強いる一方で,日立感染症関連研究支援基金 研究成果報告書46

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