過去に下水の採水経験があるタイ,インドネシアおよびネパールでは,スムーズに下水サンプリングを開始することができた.続いてベトナムとフィリピンでもサンプリングが開始され,すべての国で本格的な下水疫学調査を開始することができた.現地では採水と濃縮作業を実施し,濃縮液を輸送後,日本で微生物遺伝子の検出までを実施する体制を構築することができた.日本では,新型コロナウイルスに加え,ノロウイルス等の病原ウイルスやサルモネラ属菌等の病原細菌の検出も実施した.3.研究成果3.1 COVID-X Bangkok Meeting の開催 2023 年 1 月にタイ・バンコクのチュラロンコン大学において国際会議「COVID-X Bangkok Meet-ing」を開催した.本会議はタイチームが企画・運営し,全 6ヶ国の主要メンバーが一堂に集結する初めての機会となった.図 1 に示すように,現場見学会,シンポジウム,ワークショップおよび実験室見学会からなるイベントとした.3.1.1 現場見学会 バンコク市内の下水処理場を訪問し,バンコクにおける下水処理の状況について説明を受けた後,実際の処理施設を見学した.その際,タイチームが使用している自動採水器の操作方法等も確認した.また,下水道普及率が低い地域では,未処理日立感染症関連研究支援基金 研究成果報告書50助 成 期 間:2021 年 12 月 1 日~2024 年 11 月 30 日 助 成 金 額:2,999 万円 研究代表者:原本英司 山梨大学 国際流域環境研究センター 教授 本研究プロジェクトでは,日本,インドネシア,ネパール,フィリピン,タイおよびベトナムのアジア6ヶ国を対象に,下水疫学調査を用いて,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をはじめとする様々な感染症の流行状況を監視するための技術開発および枠組構築に取り組んだ.全プロジェクトチームが参加して開催した国際会議「COVID-X Bangkok Meeting」を経て技術移転を進め,各国で定期的なサンプリングを開始し,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のみならず,ノロウイルス等の病原ウイルスやサルモネラ属菌等の病原細菌に対する下水疫学調査を実施することができた.本プロジェクトで構築したネットワークが今後も活用され,他のアジア諸国にも下水疫学調査が普及していくことが期待される.1.研究目的 本研究プロジェクトは,日本,インドネシア,ネパール,フィリピン,タイおよびベトナムの6ヶ 国 を 対 象 に,下 水 疫 学 調 査 を 用 い て,COVID-19 の病因である新型コロナウイルスとその変異株を監視し,その成果を意思決定者と共有するシステムを開発することを目的として実施した.技術やガバナンスを含む包括的な枠組みを構築することで,アジアの様々なコミュニティのレジリエンス向上に貢献するとともに,グローバルな目標の達成に寄与することを目指した.2.研究方法・経過 研究開始当初は,COVID-19 の感染流行拡大による渡航制限の影響があったことから,オンラインでのミーティングを通じて研究を進めた.全6ヶ国のメンバーが参加する全体ミーティングに加え,詳細な採水地点・方法の確認や,所有実験機器の状況に応じた最適な測定方法等,各国グループに固有の事項を詳細に議論するための個別ミーティングも定期的に開催した.全体ミーティングでは,日本の実験室での作業をリアルタイム配信して手順を指導したものの,オンラインでは十分に指導内容が伝わらない場合もあることが課題とし て 認 識 さ れ,後 述 す る 対 面 で の 国 際 会 議「COVID-X Bangkok Meeting」の開催へとつながった.パンデミックへのレジリエンス向上のためのアジアにおける下水疫学調査の実装
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