選考委員長講評講演録(編集版) 皆さん,非常に刺激的な発表を聞いて,皆さんも私と同じように興奮しているんじゃないかと思います.本当に,ただの頭の体操にとどまらず,人の役に立つというところの使命感をしみじみと感じさせられました.パンデミックをきっかけとして,この基金を立ち上げようと決断された日立財団をはじめ,日立グループの皆さんの貢献は非常に大きいものだと感じています.選考委員長という立場上,選考して終わったあとは基本的には見守り,応援することしかできないのですが,今,各グループの研究発表を拝見し,私なりのコメントを,ここではあえて発表された順番とは逆の順番で,お話しさせていただこうと思います. まず,原本先生と北島先生の発表を拝聴して感じたのは,私の大学もレジデンシャルキャンパスでして,どうしてもクラスターが発生しやすい環境なんですね.そういう中で,どうやって感染を防いでいくかを考えると,大規模なキャンパスを持つ大学からこうした取り組みを始めていくのが良いのではないかと思います.そうすれば,さまざまな実験やモニタリングもできますし,それを段階的に,社会全体へと広げていく形が望ましいのではないでしょうか.大学は中立的な立場にありますから,企業が同じことをやると「企業 A と企業 B,どっちがいいか」という比較になりますが,大学が信頼できる証拠を積み上げて発信していけば,より広く支援や賛同が得られるようになるのではと思います.そうした取り組みが進めば,おそらく ODA(政府開発援助)も関与するでしょうし,各国の行政とも連携が生まれる可能性がある.そういう広がりを持った展開ができるのではないかと,非常に期待をしています. また,原本先生は山梨から,北島先生は札幌,そして今は東京にいらっしゃるわけで,お二人とも,発信の拠点としても非常に良い立場におられる.またそこには学生の皆さんもいらっしゃるので,次の世代も育てていけますし,そうした拡がりの可能性にワクワクしています.ですから,ぜひ今回のこのきっかけを生かして,お二人がこれからも積極的に取り組みを続けてくださることを,大いに期待しています.本当にありがとうございました. その次に,華井先生についてですが,前回,私が選考委員長として少し厳しい質問をしたのですが,それを上回るような答えが今回しっかり示されていて,大変嬉しく思っています.特に華井先生のお話を聞いて感じたのは,今回の感染症プロジェクトに選ばれた先生方に共通する「使命感」だということです.たとえ武力紛争が起きていたとしても,自分が始めたことを途中で諦めずに「やらなければならない」と思って取り組まれる姿勢ですね.これは研究者として非常に大切なことだと思います. 私自身も,昔スリランカで似たような内戦があったときに,研究者という中立的な立場で,相手がゲリラであれ,誰であれ,どうすれば研究を進められるかを,頭をひねって考えて,方法を組み立てて実行していった経験があります.今回の研究を通して,華井先生のチームには,研究者としての「レジリエンス」を強く感じました. もう一つ印象的だったのは,「ヘルス」と「信頼」は非常に深く結びついているという点です.信頼関係が築かれないままデータだけを取る研究になると,どこかで本質からずれてしまいます.そうしたことに,華井先生の研究チームはとても丁寧に向き合っていると感じました.国際教養大学 理事長・学長モンテ・カセム「日立感染症関連研究支援基金」国際シンポジウム 57
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