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公益財団法人 日立財団

11月27日(土)、第17回 日立財団科学技術セミナーをオンラインで開催しました。

竹内昌治先生
竹内昌治先生


今回は、バイオハイブリッドシステム(生体と機械の融合)の研究をされている竹内昌治氏(東京大学大学院情報理工学系研究科/生産技術研究所 教授、神奈川県立産業技術総合研究所 プロジェクトリーダー)を講師にむかえ、「SFの世界に近づく先端工学」と題して細胞をつかったものづくりの最先端研究について講演いただきました。

竹内先生の研究室は、多彩なバックグラウンドを持つ研究者が集う、異分野融合型の研究室で、生き物が持つ機能、素材を使ったロボットやセンサ、培養肉など、多岐に渡る最先端研究に日々取り組んでおられます。
今回の講演では、バイオハイブリッドという新しい研究領域の解説のほか、そこから生まれた新しい技術が、どのように社会課題の解決や私たちの生活につながっていくのか?医療、環境、食などさまざまな分野で未来につながる、まったく新しい応用技術についてわかりやすくお話いただきました。

バイオハイブリッド(生体×機械)

生きた筋肉で動かすロボット


写真は竹内先生が作られた世界発の、生きた筋肉で動かすロボットです。
電気刺激による筋収縮で動くバイオハイブリッドロボットは、エネルギー効率が高く、極めて静かに、滑らかに動きます。
将来的には、生体由来の素材で作られた血管や臓器、筋肉を持ち、皮膚をまとうアンドロイドの製造をめざしているとのこと、細胞で作られているため、自己修復や自己再生が可能なロボットも現実になるかもしれません。

バイオハイブリッドの研究から生まれた新しい技術

バイオハイブリッドセンサ(分子生物学×工学)

生き物の持つ優れた機能を持つセンサの開発。たとえば「蚊」が持つ人の汗に反応する嗅覚(触覚にある嗅覚受容体というタンパク質)と機械を融合したセンサは、人が近寄ることができない危険な災害現場で24時間人命救助、捜索を行うことができます。その他にも、超高感度なセンサを持つ動物や昆虫は数多く、そういった機能を利用すれば、がんなどの病気の早期発見や薬物の捜査にも応用できます。

バイオハイブリッドアクチュエータ(食×工学)

培養肉


私たちが普段食べている肉を、組織工学を利用して人工的につくる技術「培養肉」。
近い将来、人口増加により、これまでのように肉を食べることができなくなる可能性が世界的な問題となっていますが、培養肉は未来の食糧難の救世主として期待されています。また培養肉は、従来の畜産が抱える環境負荷、ウイルスに対する安全性、動物福祉といった課題も解決することができます。
竹内先生は、これまで困難とされていた塊肉(ステーキ肉)の開発に世界に先んじて成功し、社会実装に向けて研究を進められています。

バイオハイブリッドリアクタ(医学×工学)

iPS細胞から作った健康な脾臓の細胞をカートリッジにして糖尿病患者の体内に移植し、血糖値を正常に保ちます。
この技術は、通常の細胞を移植した場合に起こる免疫反応による問題を解決することができ、またカートリッジ型なので、何か問題が起きたときにすぐ取り出せるという安全性も備えています。

いずれも将来の実用化に向け、研究が進められているとのこと、実現すれば私たちの安心・安全な生活に大きく貢献する技術です。

SF映画の世界のようなアンドロイドを作りたいという研究の原点から、その過程で生れた私たちの生活をよりよくするためのさまざまな技術までをとてもわかりやすくお話いただき、ご参加いただいた皆様からとても楽しく学べましたとの声を多数いただきました。
「消費者が努力して問題を解決するのではなく、使うことによって無意識に問題を解決できるようなものを作るのが工学研究だと考えています。」という言葉がとても印象的で、竹内先生の研究に対する熱意が伝わる講演でした。