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公益財団法人 日立財団

日立感染症関連研究支援基金は、COVID-19禍への対処において顕在化したさまざまな問題をエビデンスに基づき学術的に調査、分析、考察し、その知見を国際的に共有することをめざす研究に対して助成するもので、株式会社日立製作所ならびに同社役員や従業員、グループ会社役員からの寄付によって新設されました。採択された研究プロジェクトには、2021年12月から最長3年間の研究助成を行い、より強靭な社会の構築に資する研究を行う研究者たちを支援していきます。

2022年1月12日(水)に、助成対象研究プロジェクトの研究概要発表会をオンラインで開催しました。今後の研究にぜひご期待ください。

開催概要

日 時 2022年1月12日(水) 14:00〜15:20
会 場 オンライン開催(Zoom)
アジェンダ 日立感染症関連研究支援基金 研究概要発表会
14:00〜
日立財団理事長挨拶
14:05〜
選考委員長講評
14:15〜
研究概要発表(5件)
15:15〜
閉会の挨拶

選考委員長講評

選考委員会を代表して、選考過程および結果について全体講評を述べたいと思います。

まず、応募状況をお伝えしますと、2021年4月から6月末までの応募期間に、合計で42件の応募を受けつけました。選考は、7月から10月にかけて行われ、選考委員の個別評価ならびに総合的な審査のもと、選考委員会での合議により、最終的に助成対象研究プロジェクトとして、5件を選定しました。

その内訳は、「総合型研究」が1件と「領域開拓型研究」が4件です。この2つの分類は、プロジェクトフォーメーションのスタイルの違いとなります。「総合型研究」が国際的かつ包括的な統合性を有する研究であるのに対して、「領域開拓型研究」は、「総合型研究」に比べて、より特定の分野、領域に焦点をあてた研究であり、特定領域の開拓や他分野との統合の可能性を示していると言えます。以下に、選定された5つのプロジェクト内容を簡単に紹介します。

まず、「総合型研究」として採択された東京大学大西先生を研究代表者とする「International Joint Study on Public Health Economics and Value Assessment of Prevention in Pandemic – Lessons learned from COVID-19 and evidence-based recommendations for future crisis (パンデミックにおける公衆衛生経済学と感染症予防の価値に関する国際共同研究–新型コロナ感染症の教訓、および、将来の危機に対する科学的根拠に基づく提言)」は、コロナ禍における初期段階の公衆衛生上の対策から、ワクチン接種に至るまで、公的な制限、経済的な視点を交え、統計、臨床疫学データから解析し、医療経済、アウトカム研究の観点から、将来のパンデミック対策に向けた政策提言を検討するもので、対象とする地域が日本、北米、ヨーロッパと大規模で、扱うテーマも複数となっており、正にフラッグシップとしてこの基金を代表する研究になると評価されました。
また、医療と経済の両面から非常にバランス良く計画されており、国際学会と連携した提言体制も明確であることが高く評価されました。検査の価値、医薬品の価値、ワクチンの価値などすべての価値を経済評価で評価していくという視点は他にはなく、意味のある成果を生み出すことが期待されます。

次に「領域開拓型」研究は、4件採択されましたが、社会科学的、社会経済学的、人文学的などのいろいろなアプローチがあり、いずれも刺激的で、よく練られていました。また、どの研究も、国際的ネットワークの中で研究が行われ、本助成をうけることで、より付加価値が高まる研究であると感じました。それぞれの研究概要は、以下の通りです。

大阪市立大学金子先生を研究代表者とする「Malaria eradication in the era of COVID-19 pandemic: a study integrating sociological, economic, and medical approaches to overcome the challenges in tropical Africa.(新型コロナウイルス感染症パンデミック下のマラリア根絶:社会・経済学と医学の統合的アプローチを通じた熱帯アフリカにおける挑戦)」は、本事業が新型コロナウイルスに限らない感染症を対象としていることと、マラリア撲滅に向けた取り組みが喫緊の課題であるアフリカにおいて、コロナ禍における統合的、学際的マラリア対策解析の意義は高く、革新的かつ独創的な研究と評価されました。この研究は、マラリアの高い死亡率(COVID-19よりはるかに高い)の低減を通じて世界の公衆衛生に有意な影響を及ぼすものですが、現在、新型コロナウイルス感染症に焦点が当てられていることでこの問題が見えにくくなっています。

早稲田大学田中先生を研究代表者とする「Covid-19 and Society: Comparative Analysis of Risk Communication, Expertise, and Citizenship (COVID-19対策の国際比較分析〜リスクコミュニケーション、専門知、市民社会)」は、COVID-19パンデミックへの社会反応について、リスクコミュニケーション、専門知能の生産と使用、リスクや専門知に関する公共の理解と反応を用いて比較・分析し、社会的文脈の中で危機管理を改善する方法、よりよい回復の道筋を示すもので、実践的にも、具体的研究実績があり、それをベースに社会科学的なアプローチで日米欧の比較を行うことは意義があると評価されました。

東京大学華井先生を研究代表者とする「Exploration of Practical Wisdom and Resilience Overcoming Downside Risk -Collecting grassroots voices in Africa under COVID-19 (ダウンサイドリスクを克服するレジリエンスと実践知の探究 – 新型コロナ危機下のアフリカにおける草の根の声)」は、コロナ禍でデモクラシーの危機が議論されるアフリカを対象に、市民のコロナ知恵・実践知を理解することで政策提言につなげる野心的かつ独創的な調査で、現地SNSデータを収集し分析する取り組みは革新的で、意義深い研究であると評価されました。

山梨大学原本先生を研究代表者とする「Implementing wastewater-based epidemiology in Asian communities to strengthen resilience against pandemics (パンデミックへのレジリエンス向上のためのアジアにおける下水疫学調査の実装)」は、下水からの病原ウイルス検出測定、および監視システムの構築により、早期検知、早期対応を可能にするもので、すでに日本で一定の蓄積のあるやり方をアジア規模で組織的に行う試みであり、対象地域には発展途上国も含まれていて、対象地域のバランスも取れていることが評価されました。

また、これら一つ一つの研究も素晴らしいですが、今後研究が進む中で、中間報告会などを通じて、それぞれの研究が相互に刺激を与え、次の展開が出てくるのではないかという期待もございます。

最後になりますが、例えばワクチンの開発ひとつをとってみても、新型コロナウイルス感染症が我々に示したものは、文理融合的なopen scienceの価値であり、そういう意味で、国境を越えて研究者を応援するということは、とても意味のあることであると私たちは考えています。選考委員会は、今回の助成が、一つの研究プロジェクトの国際的な共同作業から生まれる方向性を示し、プロジェクトが発展するにつれて社会的なインパクトが増していくようなプロジェクトの成果に何らかの形で寄与することを期待しています。採択された5つのプロジェクトはいずれもその可能性を有しており、受賞した提案の実現に向け、各プロジェクトチームの成功を、選考委員一同祈念しております。

研究概要発表

総合型研究

研究プロジェクト名称 研究代表者
International Joint Study on Public Health Economics and Value Assessment of Prevention in Pandemic – Lessons learned from COVID-19 and evidence-based recommendations for future crisis
(パンデミックにおける公衆衛生経済学と感染症予防の価値に関する国際共同研究–新型コロナ感染症の教訓、および、将来の危機に対する科学的根拠に基づく提言)

大西 昭郎

東京大学 公共政策大学院 客員教授
大西 昭郎

領域開拓型研究

研究プロジェクト名称 研究代表者
Malaria eradication in the era of COVID-19 pandemic: a study integrating sociological, economic, and medical approaches to overcome the challenges in tropical Africa
(新型コロナウイルス感染症パンデミック下のマラリア根絶:社会・経済学と医学の統合的アプローチを通じた熱帯アフリカにおける挑戦)

金子 明

大阪市立大学 大学院医学研究科
感染症科学研究センター センター長
寄生虫学分野 教授
金子 明

Covid-19 and Society: Comparative Analysis of Risk Communication, Expertise, and Citizenship
(COVID-19対策の国際比較分析〜リスクコミュニケーション、専門知、市民社会)

田中 幹人

早稲田大学 政治経済学術院 教授
田中 幹人

Exploration of Practical Wisdom and Resilience Overcoming Downside Risk
-Collecting grassroots voices in Africa under COVID-19
(ダウンサイドリスクを克服するレジリエンスと実践知の探究 — 新型コロナ危機下のアフリカにおける草の根の声)

華井 和代

東京大学 未来ビジョン研究センター 講師
華井 和代

Implementing wastewater-based epidemiology in Asian communities to strengthen resilience against pandemics
(パンデミックへのレジリエンス向上のためのアジアにおける下水疫学調査の実装)

原本 英司

山梨大学 大学院総合研究部附属
国際流域環境研究センター 教授
原本 英司

問い合わせ先

公益財団法人 日立財団「日立感染症関連研究支援基金」事務局
〒100-8220 東京都千代田区丸の内一丁目6番1号