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日立財団Webマガジン「みらい」2017創刊号
シンポジウム講演録
日立財団

講演録 3

認知症と共に生きる:
絶望を希望に変える地域の力

認知症介護研究・研修東京センター
研究部 部長

永田 久美子

認知症の人たちには色々な可能性があります。

認知症の人たちはものすごい底力を持っていらっしゃいます。いいところ、できるところをしっかり見つけながら、認知症があっても図書館に行くのが好きで、図書館の人たちと一緒に愛読書を読んだり、自分で本が読めなくなっでも、図書館の読み聞かせボランティアの人が司馬遼太郎やリルケの詩集などを読んであげている。もともと経済学が好きな方だったら、昔の経済学の古典とかですね、好きな図書館に通い続けられてその雰囲気の中で安心して楽しめる図書館にしていこうとか、認知症の人とちょっと一緒に楽しむ、色々な取り組みがされてきています。また認知症の人のスポーツも盛んになってきています。
 今新しい動きとして、認知症の人も働いて稼ごうという動きがあります。本人がやりがいをもって、かつ若者の人手不足を補う大事な担い手になってきています。そして認知症でも買い物ができるやさしい商店街にしていく取組みも広がっています。買い物をちゃんとしてくれて、お金を商店街に落としてくれたら、商店街の活性化にもつながります。その他、観光業界でも認知症があっても家族や友だちと一緒に旅行を楽しめるような町にしよう、認知症にやさしい観光の町にしよう、という取組みも始まっています。
 認知症だから特殊な取組をしなければ、というより、無理をせずにそれぞれがふだんの仕事や生活の延長で自分なりにできることをやってみることで、認知症の人の安心や暮らしやすさが想像以上に広がります。たとえば、毎朝犬の散歩をしている人が、犬の散歩の途中に、ちょっと心配な人を見かけたら声を掛けていくだけでも、認知症の行方不明者を防ぐ大きな助けになっています。また、スポーツや、音楽、趣味など、自分が好きなことをする場面で、同じ楽しみを持っている認知症の人と自然体でつきあい、一緒に楽しいひと時を過ごそうという多様な活動が全国各地に広がっています。そうした機会を通じて、元気なころから認知症の人との付き合い方を自然と学んで、認知症になってもこうした楽しい時間をもちながらの生き方ができるんだという新しい意識を広げている地域が日本でも増えています。今では小学生、中高生、大学生、さらには保育園の子も認知症を学ぶ機会も作られ、子どもたちと認知症の人との交流が活発になっています。

会場の様子
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