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日立財団 Webマガジン「みらい」VOL.2
日立財団50周年記念シンポジウム 子どもへの投資が明日をつくる ─ 教育と社会的リターン ─
日立財団

講演録 3 親力できまる子どもの将来

教育評論家 親野 知可等

居心地が良い家庭は、共感的な家庭です。

家の居心地が悪いと、本当にろくでもないことになりますから。これは、みなさんもそうですよね。仕事から家に帰ってきて、旦那に「ちょっと聞いてよー、うちの上司こんなこと言うのよ。あんたどう思う?」とグチったとき「おまえも大変だなあ、上司もちょっとは考えて欲しいよね」と言ってくれればうれしいよね。気持ちがすごいスッキリして、ちょっとはエネルギーや、旦那に対する信頼感もわいてきますよね。

参加者より質問

質問1子どもの目の前にある漫画、テレビ、そういったものにすぐに飛びついてしまいますが、そういう自制心を小学校の早いうちに正しておくべきなのか。あるいは、のびのび育てるために放っておいても良いのか。ちょっと迷っています。

親野氏だいたい、親が「自制心」と言ったときは、子どもがやりたいことをやめて、やるべきことを最優先して欲しいということですよね。「遊んでないで、これを先にやりなさい」今までそういう教育が多かったですけど、実は先にやりたいことをやらせたほうが良いんじゃないか、ということが教育界で強く言われるようになってきました。それは、アクティブラーニングと言われています。2020年に大学入試改革が予定されていますが、それも主体的に生きられる人間にしようということなんです。社会的、経済的に大きな視点で言うと、日本は今、経済的に停滞している。なぜかというとそれは、言われたことしかやらない人ばかりで、アメリカみたいにイノベイティブな人がいないからではないか。それはなぜかというと、小さいときから、「いつまでもオモチャで遊んでいないで、これをやりなさい」と、やりたいことを後回しにされてきて、それで、やるべきことをやらせてきたから。やりたいことは後回しで、やるべきことをやる。これはね、主体的じゃないわけですね。だいたい大人が「自制心」と言うときも、そういう意味なんですよね。自立できる子というと、大人はすぐに自分で勉強したりとか、自分で着替えをしたり、時間がきたら自分でちゃんと夕食を食べるとか、そういうことを自立と呼んでやらせようとする。親にとって都合が良いことを自らやってくれることが自立なんですよね。そうじゃないんです。本当の自立というのは、やりたいことをとことんやること。「今、粘土がしたいから、夢中でやる」そのほうが本当の意味での自立なんですよ。「勉強しなきゃダメでしょう」って言われても「僕やりたくない。釣りに行く」って言っちゃうくらいが本当の自立です。親や教師にとっては育てにくいですけどね。今までの日本の教育は、そこをすごく勘違いしていたんですね。自分がやりたいことを押さえ込んで親が望むことをやることが自立である、自制であると捉えちゃうと、これはちょっと大きな間違い。「粘土を終わらせてご飯にしよう」と子どもに言ったとき、生まれ持った資質にもよりますが、素直に言うことを聞く子もいます。それが、みなさんにとっては良い子ですけど、そういう子は、だいたい普通で終わっちゃう。「粘土やりたい、やりたい、いや!」と、こんな子が大物になるわけですね。

質問2中3と小6の女の子がいて、中3の子は高校受験で目標に向けて頑張っています。問題は下の子で、のびのびとそだったのはいいのですが、のびのびさせすぎたかな、とちょっと心配です。例えばネイルにハマったら、ずーっとネイルのことを考えていて、すごいのを作ってくる一方で、宿題をやらなかったり。本当にこのまま放っておいてもいいでしょうか。

親野氏ズバリ答えると、いいです。先ほども言いましたけどね、そういう子ほど見込みがある子なんですね。好きなことに夢中になっているといろいろ良いことが起こって、まず、誰よりも好きで得意になるから自信がつく。自己肯定感が強くなる。親が応援してくれるから親に感謝する。そうすると親子関係が良くなるんですよ。親が応援してくれないと能力を伸ばすことはできない。お金もないし体験できないし、情報もないし褒めてももらないから、ちょっと好きで終わっちゃう。さらに良いところは、自己実現力が付く。これは、やりたいと思ったことを自分で見つけて、自分でどんどんやっていく。これがアクティブラーニングで、これからの日本に非常に重要なもの。自分がやりたいことを自分が見つけて、自分でどんどんやっていく。これが大事で、こういう子が伸びるんです。そういう子は自己肯定感も強いから、社会人になって「部長、この企画やらせてください、絶対やります!」というふうに育っていく可能性は高い。社会もそういう人が欲しいんですよ、イノベイティブな人ね。さらに、好きなことに夢中になっていると頭が良くなるんですよね。脳科学の研究によれば、脳にはニューロンという神経細胞があります。そこには、情報を伝達するシナプスという器官があるんですが、多い人と少ない人がいる。多い人が頭の良い人。どういうときに増えるかというと、好きなことに喜びを感じて快楽物質を放出しながら頭を使っているときに、シナプスがどんどん増える。イヤイヤ勉強しているより、マニキュアを一生懸命自分で創作していたほうが、きっとシナプスが増えて頭が良くなる。情報力、処理力、記憶力、読解力、表現力すべて良くなっていく。だから、お宅のお子さんもネイルに夢中になっているとき、頭の性能が良くなっているわけ。そこに勉強を入れれば、スイスイ入っていくようになります。

親野 智可等(おやの ちから)
プロフィール 親野 智可等(おやの ちから)

本名 杉山 桂一。公立小学校で23 年間教師を務めた。子育て中の親たちの圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5 年連続第1位に輝いた。読者数も4万5千人を越え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。『「親力」で決まる!』(宝島社)、『「叱らない」しつけ』(PHP研究所)などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても知られる。

教育評論家・親野智可等 公式ホームページ(メルマガもこちら) > 公式ブログ「親力講座」 >
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