日立財団アジアイノベーションアワードは、ASEANの社会課題解決と持続可能な社会実現に資する科学技術イノベーションを促進するために、2020年度より開始した表彰事業です。
本アワードでは、持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を目的として、あるべき社会像を描き、科学技術の社会実装を計画に入れた優れた研究および研究開発において、画期的な成果をあげ、明らかに公益に供したと思われる個人またはグループを表彰します。
2024年度は、ASEAN6カ国(カンボジア、インドネシア、ラオス、ミャンマー、フィリピン、ベトナム)の26大学および研究機関を対象に、SDGsのゴール12「つくる責任 つかう責任」とゴール13「気候変動に具体的な対策を」のそれぞれ以下のターゲットに貢献する研究および研究開発の成果を募集しました。
ゴール12「つくる責任 つかう責任」
ターゲット 12.2天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用、12.3生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少、12.4化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減、12.5再生利用及び再利用により、廃棄物の発生削減、12.8持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイル、12.a科学的・技術的能力の強化
ゴール13「気候変動に具体的な対策を」
ターゲット 13.1強靱性(レジリエンス)及び適応能力を強化、13.2気候変動を国別の政策、戦略及び計画に盛り込む、13.3教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善、13.b女性や青年、地方及び社会的に疎外されたコミュニティに焦点を当てる
対象大学から推薦による応募を受け付け、書類審査、面接(最優秀賞候補者のみ遠隔で実施)、選考委員会を経て、14名の受賞者が選定されました。
以下のとおり、今年度の選考委員会メンバー、選考委員長講評ならびに、受賞者の研究概要と挨拶をご紹介します。
委員長 モンテ カセム(公立大学法人 国際教養大学 理事長・学長)
河野 泰之(京都大学 副学長(国際戦略担当))
佐藤 百合(独立行政法人 国際交流基金 理事)
西野 由高(国立大学法人筑波大学 国際産学連携本部 本部審議役 教授 博士(工学))
前田 英作(東京電機大学 システムデザイン工学部 学部長・教授 工学博士)
選考委員長 モンテ カセム
日立財団アジアイノベーションアワードはASEANの社会課題解決と持続可能な社会実現に資する科学技術イノベーションを促進するために2020年度から開始した表彰事業です。本アワードでは、持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を目的として、あるべき社会像を描き、科学技術の社会実装を計画に入れた優れた研究および研究開発において、画期的な成果をあげ、明らかに公益に供したと思われる個人またはグループを表彰しています。
2024年度は、ASEAN6か国(カンボジア、インドネシア、ラオス、ミャンマー、フィリピン、ベトナム)の26の大学・研究機関を対象に、SDGsのゴール12「つくる責任 つかう責任」とゴール13「気候変動に具体的な対策を」のそれぞれ選定されたターゲットに貢献する研究および研究開発の成果を募集しました。
本事業は今年度で5年目を迎えましたが、表彰対象の議論にあがる研究はとくに、年々質が上がってきている印象を受けます。また、今年度は、ゴール13よりもゴール12に関連する応募が多い、産業技術の連動する研究に対する関心が高い、などの特徴があり、研究を社会実装に繋げる、ということが、東南アジアにおいても広く行われ始めていることを実感しました。
中でも、特許の取得など十分な研究成果を上げ、ローカル企業と協働して製品化に向けたパイロットプロジェクトを実施するなど、研究と社会実装のバランスがよい案件が高い評価を受けました。依然として、国による研究レベルの差はあるものの、今後もいろいろな角度から丁寧に議論を重ねて表彰案件を選定し、その地域に根差した研究も積極的に奨励していきたいと思います。
2024年9月から10月に開催された選考委員会では、申請書や学術論文などの添付資料、オンライン面接を総合して評価することに加え、研究開発力の差も考慮して、厳正な審査を行いました。最終的に、合計14件の研究、および研究開発の成果(最優秀賞1件、優秀賞4件、奨励賞9件)を選定し、理事長の承認を得て、合計金額11,500,000円の表彰を決定いたしました。
選考委員会一同、この栄誉ある表彰が受賞者の構想を具現化する大きな推進力となることを期待しております。
最優秀賞
![]() 「環境にやさしい養殖魚病害防除とバイオ肥料生産のための海藻の廃棄物ゼロプロセス」 ![]() ターゲット 12.2 12.4 12.5 12.8 12.a |
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氏名 | Alim Isnansetyo | ![]() |
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所属・役職 | ガジャマダ大学 (Professor, Department of Fisheries, Faculty of Agriculture) |
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国 | インドネシア ![]() |
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研究テーマ | 環境保全型の養殖魚病害防除とバイオ肥料生産のための褐藻ホンダワラ属海藻(Sargassum sp.)のゼロ・ウェイスト・プロセス | |
社会課題 |
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研究および 研究開発の 成果 |
褐藻ホンダワラ属の海藻(Sargassum sp.)は、インドネシアに豊富に存在するものの商業利用されていません。アルギン酸塩はこのホンダワラ属海藻に存在する主な炭水化物化合物であり、さらに同藻類は生理活性のある硫酸化糖質であるフコイダンも含んでいます。飼料への添加という簡単な方法によって、魚やエビの養殖における免疫賦活剤としてのアルギン酸塩とフコイダンの利用という革新を実現しました。また、フコイダンはビブリオ病ワクチンの補助剤としても使用しています。養殖業における免疫賦活剤とワクチンの活用は、抗生物質の使用の減少、ひいては使用ゼロをも可能にするため、環境に配慮しながら病気と闘う手段になります。アルギン酸塩とフコイダン抽出後のホンダワラ属海藻の副産物は発酵プロセスを経てバイオ肥料生産に利用することができ、ゼロ・ウェイスト・プロセスを確立できます。この研究開発の成果は以下のように分類できます。
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社会実装計画 | 養殖業者は魚病を防除するために、簡易で効果的かつ環境に配慮した技術を必要としています。加えて農業従事者は、手頃な価格の高品質バイオ肥料を必要としています。当研究開発による製品は、多様な事業レベルや業者グループで実用されています。こうした革新的な製品、特に免疫賦活剤は、小規模養殖業者や社会組織を対象として養殖での研修と適用を実施しながら導入されています。またフコイダン添加ワクチンの研修と適用は、養殖業者グループと中小規模の民間企業を対象に実施されました。フコイダン添加ワクチンは海産養殖業者に配布され、魚の免疫システム改善のために導入されています。商業的には、同ワクチンは覚書締結に基づき民間企業によって販売される予定です。また導入にあたり、複数の州の海洋・漁業機関と連携を図ってきました。さらに、連続抽出後のホンダワラ属海藻廃棄物から生産されるバイオ肥料は、大量生産に向けて規模拡大が進められています。 | |
SDGsへの 貢献 |
免疫賦活剤、フコイダン添加ワクチン、バイオ肥料のゼロ・ウェイスト生産システムは持続可能な養殖・農業の生産性向上に大きく貢献します。当研究開発は、天然資源の効率的な利用及び排出と廃棄物の削減を目標とするSDG目標12(つくる責任、つかう責任)の達成に貢献します。さらに、SDG目標2(飢餓をゼロに)、目標3(すべての人に健康と福祉を)、6、8、14、17の達成にも貢献します。 | |
活動の様子 |
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受賞コメント | 海藻のゼロ・ウェイスト生産システム(SZwPS)と循環型経済は、持続可能な養殖と農業に不可欠です。川上から川下までの総合的な海藻産業は、ブルーエコノミーの役割を最大化するためのインドネシアの経済開発の優先事項です。SZwPSに基づくブルーエコノミーは、SDGの目標達成、特に責任ある消費と生産に大きく貢献します。 |
優秀賞
![]() 「フルフラール製造および廃水処理への応用を目指した ![]() ターゲット 12.4 12.5 |
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氏名 | Hieu Huu Nguyen | ![]() |
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所属・役職 | ホーチミン市工科大学 (Associate Professor Dr., Faculty of Chemical Engineering) |
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国 | ベトナム ![]() |
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研究テーマ | フルフラール製造および廃水処理への応用を目指したバイオマスからのナノマテリアル合成 | |
社会課題 | 有機染料、重金属、抗生物質による汚染は、人間の健康と生態系を危険にさらしています。加えて農業副産物の余剰放出が生み出す経済価値は限定的である一方、適切な廃棄物管理・処理のためには多大なコストが生じます。こうした課題は、持続可能な開発と環境汚染の低減が急務であることを浮き彫りにしています。 | |
研究および 研究開発の 成果 |
バイオベースの材料を開発することにより、製品用途を拡大し、持続可能性を向上させ、消費者の受容性を広げる道が開け、経済と環境両方の懸念に対処することができます。またバイオ燃料の生産方法を改善することで、従来の燃料に代わる、よりクリーンで効率的な代替燃料を実現することができ、大気汚染の削減に貢献します。さらにこれらの材料は、重金属や有機汚染物質(抗生物質、染料など)といった汚染物質をターゲットとした、環境浄化のための効果的な成分に変換することができます。革新的な合成と最適化技術に焦点を当てることで、バイオベース材料は持続可能な環境および産業への応用に向けた有望なソリューションとなります。 | |
社会実装計画 | 特に廃水処理分野で研究の実用化を広げることは、環境汚染に対処し、持続可能な開発を支援する上で重要な役割を果たします。 企業との協力によりパイロットプロジェクトを実際の廃水処理に拡大し、その成果を国際的な水質基準に照らして測定することで、地域水域の安全性を確保することができます。さらに、革新的な方法での天然資源の活用は、技術進歩と持続可能な実践を結びつけることで社会開発に貢献します。世界的なワークショップ、トレーニング、様々な研究所による共同研究イニシアチブを運営することで科学の進歩が促進され、環境衛生の向上、排出量の削減、生活全体の質の向上を目指した持続可能なソリューションが実現します。 |
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SDGsへの 貢献 |
バイオマス資源の利用は、廃棄物の削減や汚染の改善を通じて環境保護を推進します。雇用創出とエネルギー安全保障を通じて経済成長を促進する一方、汚染を減らし清潔な水へのアクセスを向上させることで公衆衛生も改善します。さらには持続可能な開発を支援し、気候変動を緩和し、農村地域の生活を向上させます。 | |
活動の様子 |
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受賞コメント | 先進材料の研究と応用における革新を通じて、廃棄物であるバイオマスをクリーンなエネルギー生成、環境の改善、気候変動の最小化に応用できる材料に変換することで有意義な貢献を果たし、将来の世代により良い生活環境を提供することを目指しています。 |
優秀賞
![]() 「環境革新型複合製品としてのジオポリマーとアルカリ活性材料」 ![]() ターゲット 12.2 12.4 12.5 12.a |
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氏名 | Michael Angelo Baliwag Promentilla | ![]() |
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所属・役職 | デ・ラ・サール大学 (Professor, Chemical Engineering, Waste and Resource Management Unit of the Center for Engineering and Sustainable Development Research (CESDR)) |
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国 | フィリピン ![]() |
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研究テーマ | 産業廃棄物をグリーンなセメント系材料の原料に変える:環境革新型複合製品としてのジオポリマーとアルカリ活性材料 | |
社会課題 | 私たちは、セメント生産による高い炭素排出量、持続不可能な資源利用、産業廃棄物管理の問題(主に石炭フライアッシュと鉱業廃棄物)など、環境と産業面で重大な課題に直面しています。一方、発展する都市部では、カーボンフットプリントがより小さい持続可能なセメント系材料で建設された建物やインフラがますます必要とされています。 | |
研究および 研究開発の 成果 |
私たちの研究プログラムは、地元で入手できる産業廃棄物を価値ある建築資材に変えて、革新的なジオポリマー技術とエンボディドカーボン(建物の建築・改修で排出される温室効果ガスの総和)の少ないアルカリ活性材料を開発することにより、持続可能な建設のためのソリューション・ポートフォリオを提供しています。この中には、力学特性と自己修復力を向上させるために、それぞれ廃棄天然繊維と微生物を添加する技術が含まれます。石炭フライアッシュとニッケルラテライト鉱床の廃棄物から生成した環境に配慮した材料は、デ・ラ・サール大学ラグーナキャンパスで舗装材として実際に使われ、実社会での利用可能性が明らかになっています。私たちは2つの特許と1つの実用新案を取得し、このイノベーションの技術的な成功と広範囲な実装の可能性を示す30本以上の科学論文を発表しています。 | |
社会実装計画 | 私たちが提案する社会への実装により、複数の産業界を循環型経済のアプローチでつなぐ変革的なソリューションが実現します。石炭火力発電所や採鉱から出る廃棄物を利用して建築資材を作ることで、廃棄物管理の課題を解決しながら、建設業界の脱炭素化を支援しています。地方自治体やパートナー産業と連携する私たちのアプローチは、この相互連携型システムを実証するものです。このプロジェクトにより、地域労働者の訓練を通じた環境に配慮した雇用が創出され、大学による知識共有が進み、3Dプリンターによる建築への将来的な応用を含め、これらの持続可能な材料を使用するための建設業界との協力が実現すると思われます。この統合的アプローチにより二酸化炭素排出量は削減され、ある産業での廃棄物が別の産業のための貴重な資源に生まれ変わります。 | |
SDGsへの 貢献 |
私たちの研究プログラムは、二酸化炭素排出量の削減(SDG目標13)、責任ある消費の促進(目標12)、地域雇用の創出(目標8)、持続可能なインフラの支援(目標9)、持続可能な都市の実現(目標11)など、複数のSDG目標を推進します。持続可能な建設における経済的機会を創出しながら、産業廃棄物を価値ある資源に変換することを目指しています。 | 活動の様子 |
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受賞コメント | 自己修復力のある材料で建物が建設され、産業廃棄物が価値ある資源となり、建築が地球を傷つけるのではなく修復する望ましい未来を想像してみてください。我々はイノベーションを通じて建造物を建てるにとどまらず、持続可能で気候変動に強い未来を構築しています。 |
優秀賞
![]() 「ベトナム固有種薬草由来の医薬製品の研究開発」 ![]() ターゲット 12.2 12.4 12.5 12.8 12.a |
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氏名 | Nhung Ai Thi Nguyen | ![]() |
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所属・役職 | フエ大学 (Associate Professor, Ph.D., Head of Physical Chemistry Section, Chemistry Department/Director of Center for Research, Production and Technology Transfer) |
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国 | ベトナム ![]() |
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研究テーマ | 環境に配慮した抽出技術および現代的なシミュレーション法を使った固有種薬草由来の医薬製品の研究開発 | |
社会課題 | 汚染、気候変動、残留農薬は健康を害するだけでなく抗生剤耐性を助長し、薬の効果を低下させます。天然由来薬の研究では、治療を強化し、免疫力を高め、耐性を減らすことを目指しています。その一方で、持続不可能な形での薬草の収穫は環境破壊につながりかねません。シミュレーション、実験、環境に配慮した抽出方法を組み合わせることで、病気に対する効果的でタイムリーな治療が可能になります。 | |
研究および 研究開発の 成果 |
トゥアティエンフエ省の国家的な薬草データベースの開発により、固有種や希少種の植物に関する重要なデータが提供され、効果的な管理と保全が促進されます。バックマー国立公園とフォンディエン自然保護区には薬草の保護地域が設置され、育苗場では固有種の試験と繁殖が行われています。生物活性化合物を安全に単離するために、高度な抽出方法を採用しています。こうした取り組みが、環境に優しい生産を促進し、人々の意識を高め、教育プログラムを充実させます。技術センターでは、医化学と持続可能な開発の研究を促進しています。当研究では、ディスティコクラミス属、ノムシタケ属などの固有種の薬用植物の生物学的および化学的分析に焦点を当て、抗生剤耐性に対処するために計算モデルや室内実験を活用しながら細菌感染症や疾患症候群の治療法を開発しています。 | |
社会実装計画 |
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SDGsへの 貢献 |
研究成果により高品質なベトナム産健康製品の大量生産が可能になり、公衆衛生と経済成長の両方に貢献します。フエ大学科学研究所(HUSCI)との合弁事業により、薬草、ハーブティー、キノコの商品化が促進されます。知的財産はフエ大学科学研究所が管理しています。移転の選択肢には、技術プロセスの移転、パートナーシップ、製品の直接移転などがあります。 | |
活動の様子 |
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受賞コメント | 2024年度日立財団アジアイノベーションアワードは、特に天然薬剤と持続可能な開発における科学研究、技術、革新への貢献を称える賞と言えます。この受賞により、ベトナム産の薬用植物、責任ある生産、世界の持続可能性が促進されることでしょう。私たちは、地域社会のために研究を進め、豊かな未来のために持続可能な実践を育むことに取り組みます。 |
優秀賞
![]() 「テンペ産業の副産物を利用したマイコプロテインの生産」 ![]() ターゲット 12.2 12.4 12.5 |
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氏名 | Rachma Wikandari | ![]() |
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所属・役職 | ガジャマダ大学 (Associate Professor, Dr., Department of Food and Agricultural Product Technology) |
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国 | インドネシア ![]() |
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研究テーマ | 循環型経済と食料安全保障の強化を目指した、栄養価が高く持続可能で手頃な価格の代替タンパク質であるマイコプロテインへの食品工業副産物の変換 | |
社会課題 | インドネシアのテンペ産業は、1日に約305万7,000リットルの大豆煮汁を産出し、環境に大きな負荷をかけています。私の研究では、糸状菌を使ってこの副産物を栄養豊富なマイコプロテインに変換します。この革新的で持続可能なタンパク質源は、インドネシアのタンパク質ニーズに対応し、廃棄物を削減し、循環経済の原則に則り食品工業副産物の価値を高めるものです。 | |
研究および 研究開発の 成果 |
私たちのチームは、大豆煮汁からマイコプロテインを培養・生産することに成功し、高タンパク質・高繊維含量・低脂肪・すべての必須アミノ酸を含む栄養豊富な製品を生み出しました。このマイコプロテインを配合した様々な食肉代替製品について参加者200人による官能検査を行い、大多数の人が許容できると認めました。さらに消費者テスト参加者の80%以上がこれらの製品に購入意欲を示しました。この研究は、インドネシア(教育文化・研究技術省、ロレアル・インドネシア)および海外(スウェーデン研究評議会)から多大な資金援助を受けています。また、当プロジェクトは食品科学における革新性が認められ、国際食品科学工学連合(IUFoST)からも表彰されました。 | |
社会実装計画 | 私の研究開発プロジェクトの社会実装計画では、テンペ工場との協力により大豆煮汁をマイコプロテインに変換して、食肉代替製品を製造・商品化することを目指しています。8万1,000を超えるテンペ製造業者が毎日大量の廃棄物を排出しているため、この取り組みによって業界で働く人々の生活を向上させることができます。現在、私たちはジョグジャカルタ州最大のテンペ企業の一つであるUD Super Dangsul社と提携しています。パートナーシップが成功すれば類似産業でより広範な応用が可能になり、インドネシア全土で持続可能な実践を促進し、廃棄物を減らし、タンパク質の利用率を高めることができると思われます。 | |
SDGsへの 貢献 |
この研究開発イニシアチブはテンペ産業の副産物を持続可能なマイコプロテインに変換することで、タンパク質不足に取り組み、廃棄物管理を促進します。目標2.1、2.3、2.4を通じてSDGs目標2(飢餓をゼロに)、目標12.2、12.4、12.5を通じてSDGs目標12(つくる責任、つかう責任)を支援し、インドネシアの食料安全保障の強化と廃棄物の削減につながります。 | |
活動の様子 |
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受賞コメント | 日立財団から今回の素晴らしい賞を受賞できたことを光栄に思います。発展途上国の重大な課題に取り組み、SDGs目標の達成に貢献するインパクトある研究を促進しようとする財団の姿勢に感謝申し上げます。地域の差し迫った問題に深く根差しつつ、グローバルなアプローチでマルチステークホルダーとの協力によって対応する研究がインドネシアでさらに広まり、地域社会と分野を超えてより広く大きな影響を及ぼすことを強く願います。 |
![]() 「機械化学および表面工学(MCS)のアプローチを活用した高活性金触媒とバイオマスベースのナノ複合材料の開発」 ![]() ターゲット 12.2 12.3 12.4 12.5 12.8 12.a |
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氏名 | Dien Xuan Luong |
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所属・ 役職 |
ハノイ工科大学 (Associate Professor, Senior Lecturer, Vice Director of Center for Student Innovation and Entrepreneurship, School of Chemistry and Life Science) |
国 | ベトナム ![]() |
研究 テーマ |
SDGs目標の達成を目指した、機械化学および表面工学(MCS)のアプローチを活用した高活性金触媒とバイオマスベースのナノ複合材料の開発 |
研究概要 グリーンな産業・農業生産と環境のためには、汚染が少なく高効率の工程(省エネルギー、廃水や固体・気体状態の有害物質がない)を伴う新技術が必要とされます。 人間は常により良く、より便利なものを求めつつ、より健康的な生活と、災害を防ぐためのツール(生活や健康管理を制御・支援するための強力な素材と装置)を必要としています。 持続可能な用途に向けた革新的な触媒材料を開発するために、機械化学と表面工学を利用する方法を開拓しました。これらのアプローチにより、0℃以下、高湿度下で作動可能な高活性金触媒の開発が可能となり、空気浄化技術に革命をもたらしました。 廃棄物・バイオマスの価値化においては、機械化学技術と環境に優しい水熱炭化を組み合わせ、廃棄物を多孔性、形態、表面特性を向上させた機能性材料に変換しました。これらの材料は、エネルギー、環境、医療、空気浄化に応用されています。 機械化学に基づくこの進歩は、高効率性を得るため表面工学によって最適化されたバナジウムおよびマンガンベースの脱硝触媒の開発にもつながりました。これらの触媒はベトナム電力公社によって順調に導入にされ、火力発電所のNOx(窒素酸化物)排出に対する効果的なソリューションを提供しました。 これらの技術革新を通じて、持続可能性と環境保護に幅広く応用できる、スケーラブルで環境に配慮した技術基盤を確立しました。 MCS技術の適用は3つの主要分野で人間の生活の質を向上させています。すなわち、社会的には雇用の拡大、付加価値の向上、機会の拡大であり、環境的には環境により優しい実践の促進と持続可能性の促進であり、そして経済的には生産の価値化による富の創出、医療と食品の質の向上、エネルギーの節約になります。 私たちの技術は、環境に優しい生産と環境、より健康的な生活(廃水なし、排気ガスや水銀などの有毒試料の制御、気候変動の防止−SDGs目標12と目標13)、健康的で栄養豊富な食品、農家の収入を増やすためのバイオマスの価値化、エネルギー・環境・ヘルスケアのための適切な技術ソリューション(目標12と目標13)に役立ちます。 |
![]() 「アンサンブル予報を用いたインドネシアの気象予測改善による気候レジリエンスの強化」 ![]() ターゲット 13.1 |
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氏名 | Heri Kuswanto |
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所属・ 役職 |
スラバヤ工科大学 (Professor, Department of Statistics & Center for Disaster Mitigation and Climate Change) |
国 | インドネシア ![]() |
研究 テーマ |
アンサンブル予測を使ったインドネシアの気象予測の改善による気候へのレジリエンスの強化 |
研究概要 気候変動により天候の予測不能性が高まっており、インドネシアの農業と生活に重大なリスクをもたらしています。私たちの研究開発では、アンサンブル手法に基づく干ばつ監視・予測システムを開発し、またガンマ分布とフレシェ分布を用いた新しい較正方法により、サブシーズン予測や豪雨などの異常気象予測を改善しました。さらに、安定した気象現象に対して優れた性能を発揮し、作付けカレンダーの開発に活用されている人工的なアンサンブル予測を作成しました。社会的な影響を最大化するため、より広範な気候適応戦略の一環として、私たちはこれらのツールを地域コミュニティ、特に農村部の農業従事者が利用できるようにしています。このアプローチにより、コミュニティは気候関連の災害への備えを強化し、レジリエンスを向上させています。私たちの取り組みは、情報に基づいた意思決定を支援し、変化する気候に対応した災害リスクの軽減、生活の保護、持続可能な開発の促進に向けた積極的な対策を促すことでSDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」の考えと一致しています。 |
![]() 「感染対策と免疫調整のための多用途の生体機能化医用材料の開発」 ![]() ターゲット 13.1 13.3 |
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氏名 | Ika Dewi Ana |
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所属・ 役職 |
ガジャマダ大学 (Professor, Dental Biomedical Sciences, Faculty of Dentistry) |
国 | インドネシア ![]() |
研究 テーマ |
適応力のある医療技術を目指した感染対策と免疫調整のための多用途の生体機能化医用材料の開発 |
研究概要 気候変動に関連した感染症発生率や自己免疫疾患が増加したことで抗生物質療法の拡大が求められているが、そうした治療は多くの場合コストがかかり、効果も低く、抗生剤耐性の一因となります。このため、感染症に対抗しつつ、免疫防御も強化する安全な二重機能を持つ技術の開発が急務となっています。これに対応して我々の研究では、炭酸アパタイト(CHA)ナノ粒子を開発しました。同粒子はウイルス感染症や他の感染症に対して適応反応を示すよう生体機能化することができ、気候変動による社会的影響を緩和するのに役立ちます。私たちのイノベーションは、新興感染症に対処するための将来の医薬品・ワクチン開発の基礎を築くものです。SDGs目標12に沿ったこのアプローチは、社会の回復力と適応力を強化することを目指しています。さらに、生物医学・製薬業界、政府、学界において協力ネットワークを構築することで持続可能なイノベーションを促進し、SDGs目標3、8、9、11を推進します。 |
![]() 「世界のメタン収支に及ぶフィリピン湖沼の影響度の理解」 ![]() ターゲット 13.1 13.2 13.3 13.b |
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氏名 | Milette Mendoza Pascual |
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所属・ 役職 |
アテネオ・デ・マニラ大学 (Assistant Professor, Environmental Science) |
国 | フィリピン ![]() |
研究 テーマ |
世界のメタン収支に及ぶフィリピン湖沼の影響度を理解する |
研究概要 熱帯湖は、二酸化炭素よりも強力な温室効果ガスであるメタン(CH4)の吸収源及び供給源の両方として大きな可能性を持ちます。我々はフィリピンの湖沼で蓄積されたCH4濃度を記録するための基礎づくりを目指しています。湖沼の生態系サービス間のトレードオフや、環境の変化に対するルーピング(相互因果の)フィードバックを理解するために的確に設計されたモニタリング計画と詳細な分析が求められるため、この研究では湖沼で産出、蓄積、排出されるCH4を記録し、世界のメタン収支に対するその重大性を評価する必要があります。我々は熱帯湖のCH4動態に影響を与える自然要因の記録を試みました。具体的な要因としては、CH4に起因する栄養経路や湖沼ごとに異なる混合レジームなどが挙げられます。今後の方向性としては、突発的な物理的撹乱や極端な環境変化、富栄養化などの人為的脅威に直面した場合の熱帯湖のCH4産出量の変化や大気中の温室効果ガスへの寄与を詳しく調べるとともに、国内各地で長期的な湖沼モニタリングを確立することに焦点を当てていきます。このプロジェクトを通じた社会的影響として、私たちの意欲を高めるために地元のパートナーシップ、協力関係、学生の参加を保持しました。私たちの活動が、限りある淡水資源の持続可能な管理を向上させる一助になればと考えています。より大きなスケールでは、地球の将来的な気候の維持を目指したモデルと環境管理目標・計画の策定に役立つ有益なデータや新しい知識を科学界、専門家、利害関係者に提供できるでしょう。 |
![]() 「ラオス・ルアンプラバン県における豚の飼育による環境・気候変動に対する豚ふん尿汚染の管理」 ![]() ターゲット 13.1 13.2 13.b |
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氏名 | Nouphone Manivanh |
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所属・ 役職 |
スファヌボン大学 (Ph.D., Head of Department of Animal Science, Faculty of Agriculture and Forest Resources, Department of Animal Science) |
国 | ラオス ![]() |
研究 テーマ |
ラオス人民民主共和国ルアンプラバン県における深床敷わら式での飼育による環境及び気候変動に及ぶブタふん尿汚染の管理 |
研究概要 小規模養豚場における主な課題には、不十分な実践的管理、疾病の未制御、栄養価の低い飼料、母ブタあたりの少ない産子数、子ブタの高い死亡率、動物の健康を損ね、地域社会に悪臭を放つ自由な放し飼い式の飼育があります。 このためプロジェクトでは、この問題の解決法、特に低コストで豚の成長成績を向上させる方法を見出すことを主な目的としています。微生物発酵を応用することで、現地の飼料(キャッサバの根)の栄養価の向上を可能にしながら、飼料コストの削減と農家への経済的利益を実現できます。またブタを深床敷わら式で飼育することで、気候変動に対する畜産の課題であるメタンガス排出の削減に寄与します。 全活動に120名が参加し、プロジェクト終了後に:
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![]() 「コメ生産・水産養殖の持続可能性に向けたエコ戦略」 ![]() ターゲット 12.4 12.5 12.8 12.a |
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氏名 | Phuong Nguyen Xuan Vo |
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所属・ 役職 |
トンデュックタン大学 (Dr., Faculty of Applied Sciences) |
国 | ベトナム ![]() |
研究 テーマ |
コメ生産・水産養殖の持続可能性に向けたエコ戦略 |
研究概要 集約農業に使用される大量の肥料と、集約養殖から放出される大量の窒素、リン酸、有機炭素は、気候変動と漁業の衰退を加速させ、メコン川下流域の生態系全体を汚染しています。 我々は、養殖池沈殿物、もみ殻灰、無機NPK前駆体、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)バイオスティミュラント(生物刺激資材)から、稲の健全な生育に十分な養分を自然に緩やかに放出する18-7-7-TEおよび8-15-15-TE肥料ペレットを開発しました。2,000平方メートルの圃場でOM-5451品種のイネを1年間栽培した結果、イネの収量と品質は同等で、窒素利用効率は2倍向上し、肥料と農薬のコストは2倍減少し、水柱への養分流出が大幅に減少しました。 肥料の過剰投与とその結果としての養分流出を回避するために、施肥率や施肥頻度、様々な季節における圃場の水管理といった実践指針を提案しました。この研究は、持続可能な方法による農業経済および環境回復力の相互利益を実現しています。 |
![]() 「持続可能な紙生産に向けたバクテリアナノセルロースへの製紙スラッジの変換」 ![]() ターゲット 12.2 12.5 |
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氏名 | Quan Dinh Nguyen |
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所属・ 役職 |
ホーチミン市工科大学 (Associate Professor, Faculty of Chemical Engineering) |
国 | ベトナム ![]() |
研究 テーマ |
持続可能な紙生産に向けたバクテリアナノセルロースへの製紙スラッジの変換 |
研究概要 この研究では、製紙工場から排出される過剰な廃棄物や汚染という社会問題、特に製紙スラッジの処理に取り組んでいます。 焼却や埋め立てといった従来のスラッジ処理方法は、資源を浪費し、環境悪化の一因となっています。当プロジェクトは革新的な研究開発を通じて、製紙スラッジを加水分解し、その後発酵によりバクテリアナノセルロースに変換する方法を開発しました。この材料は古紙に再統合することができ、品質向上と生産の簡素化につながるだけでなく、他の用途にも応用が可能です。社会実装としては、スケーラブルな応用を目指した製紙工場でのパイロットテストが含まれます。このソリューションは、製紙業における廃棄物の削減、資源の節約、循環型経済の構築により、複数の持続可能な開発目標(SDGs)、特に目標12(つくる責任、つかう責任)に貢献します。このアプローチは、製紙業界において廃棄物を活用して新たな経済機会を創出する一助になります。 |
![]() 「大豆かすと大豆残渣の高付加価値化によるカンボジア産大豆イノベーション」 ![]() ターゲット 12.2 12.3 12.4 12.5 12.a |
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氏名 | Reasmey Tan |
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所属・ 役職 |
カンボジア工科大学 (Assistant Professor, Dr., Deputy Director of Research and Innovation Center, Food Technology and Nutrition Research Unit, Research and Innovation Center) |
国 | カンボジア ![]() |
研究 テーマ |
大豆かすとおからを高付加価値製品に変換することによる、カンボジア産大豆の持続可能性とゼロ・ウェイストの達成に向けた大豆イノベーション |
研究概要 カンボジアは農業国で、大豆は国内消費と輸出用に栽培されています。しかし、カンボジア産大豆油はまだ市場に導入されていません。加えて、地元の醤油の品質はいまだ改善の余地があります。さらに、豆乳・豆腐製造から出る大量の大豆残滓(おから)は、大豆油抽出から得られる大豆かすと同様に、高付加価値製品に転換すべきです。我々の研究成果により、大豆油の抽出、精製条件、油の配合が最適化されました。また異なる原料、酵素、脱脂大豆かす、発芽大豆を用いた醤油発酵プロセスも評価しました。おからの使用により、クッキー、グルテンフリークッキー、テンペの製造も可能です。ブレンドオイルは多くの健康効果をもたらす健康的な油であるため、カンボジアの人々に向けて製造を検討する必要があります。また発芽大豆から作られた醤油は、より多くの生物活性化合物とアミノ酸窒素を含んでいます。このような取り組みは、食品廃棄物の削減にもつながります。このプロジェクトによりSDGs目標12「つくる責任、つかう責任」、特に目標12.2〜12.5と12.aに貢献することができます。 |
![]() 「ベトナム産農産物による健康への利益と持続可能な植物性製品の開発」 ![]() ターゲット 12.2 12.a |
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氏名 | Trang Thu Vu |
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所属・ 役職 |
ハノイ工科大学 (Associate Professor, Deputy Head, Department of Food Engineering) |
国 | ベトナム ![]() |
研究 テーマ |
ベトナム産農産物による健康への利益と持続可能な植物性製品の開発 |
研究概要 ベトナム産農産物から植物性/代替飲料・ヨーグルト・チーズといった代替乳製品を生産することは、動物性製品と比較して温室効果ガスの排出削減につながり、気候変動や生態系の保護に大きな影響を与えます。また、こうした製品は消費者にとってアミノ酸と脂肪酸の完全な栄養源となり、地域社会の栄養源として大きく貢献し、新鮮な牛乳の不足(ベトナム市場需要のわずか30%の供給)を最小限に抑え、より低価格で地元の農産物の付加価値を高めることで、より幅広い消費者に役立ちます。こうした点は公衆衛生にとって非常に重要であり、多忙な現代社会に適しており、自然と調和した模範的なライフスタイルを促進します。我々の革新技術を生産加工へと移転することで、ベトナムの製造企業が持つ持続可能な加工における科学技術能力が強化され、雇用を創出し、地元の発酵製品が促進されます。 私たちの研究成果は、SDGs目標3、12、12a、12.2、12.9に貢献しています。 |