Hitachi

公益財団法人 日立財団理工系女子応援プロジェクト わたしのあした

パイオニアトーク Vol.2

玉城 絵美さん

パイオニアトーク Vol.2

玉城 絵美さん

(Ph.D.)

H2L, Inc., 創業者。

外務省、WINDS(女性の理系キャリア促進のためのイニシアティブ)大使。 内閣府 総合科学技術・イノベーション会議、科学技術イノベーション政策推進専門調査会、専門委員。早稲田大学 創造理工学研究科、准教授。プロトタイピング協会、副会長。JSTさきがけ情報処理学会 ヒューマンコンピュータインタラクション研究会、幹事

自分のビジョンを実現し社会に広めたい。だから理系に進み起業しました。

第一線で活躍する理工系女子の先輩に日立のリケジョがお話を聞く対談シリーズ。今回は、ヒューマンコンピューターインタラクションの分野において注目されている若手研究者、玉城絵美早稲田大学准教授。研究者として人とコンピューターが情報共有するための機器やシステムの研究だけなく、その技術をもとに製品の開発・販売を手がける起業家としても活躍されています。自らのモチベーションに従って研究に励み、それを製品というかたちにして世の中に広げていく。そんな玉城さんの生き方や考え方をお聞きしました。
聞き手:荒木 由季子(株式会社日立製作所 理事)

ヒューマンコンピューターインタラクションとは

部屋にいながら外界と触れあいたい。それがこの研究を始めた動機です。

荒木: 先程、玉城先生が開発された「UnlimitedHand(アンリミテッドハンド)を体験させて頂き(ムービー参照)、ゲームとしてのエンターテインメントの面白さを感じましたが、ここにはいろいろな技術、単にエンジニアリングだけではなくて、例えば人間の体に関する技術が使われているのですよね。 ※H2L 株式会社が発表した、腕に巻くだけで直感的にゲームを操作でき、ゲーム内の疑似触感も得られる新技術が搭載された「触感型ゲームコントローラ」

玉城 絵美さん

玉城: そうです。生理学です。

荒木: 生理学に関する知識や心理学的なことなど、いろいろなことを総合した装置になると思うのですが、これを開発されたバックグランドとして、先生の研究について簡単に教えて頂けますか。

玉城: 私自身はもともと情報工学という分野で、部屋の中にいながら部屋の外に出ているような体験をするための研究をずっと進めていました。特に手の動きの研究をしていて、それがこの装置「UnlimitedHand」の開発につながりました。初めは情報工学や情報科学だけで開発しようと思っていたのですが、研究の対象が人なので、生理学や認知心理学、そして場合によっては社会心理学や生態学などいろいろな分野の知識が必要だと分かりました。このように、私の研究のバックグランドは情報科学から生理学、認知心理学というふうに進んでいきました。今は一人で全部をやるのは無理だと思い、共同研究というかたちで進めています。

荒木: 先生が関わられている分野は情報科学や情報工学、エンジニアリングだけではなくて、かなり幅広い分野ですよね。これが「ヒューマンコンピューターインタラクション:HCI」という学問分野になるのですか。 ※人間が使用するための対話型システムのデザイン、評価、実装に関連し、それら周辺の主要な現象に関する研究を含む学問分野。

玉城: はい。

荒木: この分野に関わる研究者はまだ少ないと聞いていますが、そもそもHCIをやろうと考え始めたきっかけはどんなことでしょうか。

玉城: 体調を崩して入院をしていたことがきっかけでした。普通、入院生活というと苦しくて大変だというイメージがありますよね。実際に私も入院した当初は体調が悪くて大変だったのですが、だんだん治っていき全快するまでがまた長くて大変なのです。リハビリ中だったり、これから手術する方だったり、入院している人たちはなかなか外の人と交流ができません。部屋の中でできることもたくさんありますが、主に入院で失われてしまうのは、社会進出や就労など思い出作りをする機会なのです。入院中にそうした機会を失っている方々をたくさん見ました。それがHCIを研究するモチベーションになりました。入院していた時に、今体験して頂いた「UnlimitedHand」や「FirstVR(ファーストブイアール)」があれば、もっといろいろな体験ができたでしょうし、場合によっては外に出て講義も受けられたのではないかと思いました。それで当時、そういう装置を買いたいと探してみたのですが、どこにも売っていませんでした。だったら自分で作るしかないと思ったのですが、その考えは当時はまだ先進的過ぎました。それで、今後10年、20年後を見すえて、そうした装置をどうやって作ったら良いか調べました。ならば研究者になるしかないと。そして、その装置を世の中に普及させていくとしたら、研究者だけでなく起業家にもなるしかないと思い立ちました。ということで、研究もしながら起業もしました。 ※H2Lが開発した腕に巻くことで筋肉の動きを検出し、直感的にVR/AR体験ができるデバイス

荒木: かなり先を見て研究の道に進まれて、しかもモノを作るというところまでお考えになっていたのですね。ところで、先生はいろいろな技術を開発され、また世の中のニーズも調べられていますけれど、ご自身の技術によってどんな社会を創っていきたいと考えていますか。

玉城: 部屋の中にいながらにしていろいろな体験ができる社会を作ろうとしています。部屋の中でテレビ電話をしたり、新聞を読んだり、テレビやネットを見たりというのは今の社会では普通ですが、私はそれをさらに進めて、インターネットを介してニューヨークにいる友達や現地の人と一緒に買い物をするというような体験を共有したり、ハワイでサーフィンをしている人の体を借りて一緒にサーフィンを体験したり、その3時間後にはインドネシアに行って現地の楽器の演奏を体験したり、たった1日でいろいろな体験ができる社会になればいいと思っています。世の中が変わってくると人間の行動も変わるし、文化も変わっていくと思います。江戸時代であれば人は50年くらいしか生きられず、村の中でできることも限られていましたが、1日で世界中のいろいろな場所で3倍の体験ができたら、同じ50年の3倍の150年を生きたのと同じじゃないかと思うのです。

荒木: なるほど、3倍の人生経験ができるということですね!

玉城: はい。そう考えています。できるだけ人生を豊かに、思い出である体験をたくさんもった状態で人生を終えることができる。そこまでいく世の中にしたいですね。

荒木: 人生の経験を豊かにするということですね。先生の技術を使えば、いずれそうなると。

玉城: はい。

荒木: あと、いろいろな国で経験を共有するという例を挙げられていましたが、そうやって1日のうちにさまざまな国の人と経験をシェアできるようになると、現代の紛争問題なども、経験をシェアすることによって相互理解が進んだり、違いを受け入れることにつながるかもしれませんね。そういう社会的なインパクトを生む可能性があると感じました。

玉城: そうですね。言語的な理解だけじゃなく、文化的な理解や体感としての理解が進むと思います。

荒木: 素晴らしい技術だと思います。本当にそういう世の中になるといいですね。私が生きている間に実現してほしいです。

玉城: もちろんです。

荒木: ぜひお願いします。

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