論文特集
人口減少時代の
多文化共生
- 巻頭言
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わが国にも将来の労働者不足、年金不足など諸外国と同質の深刻な問題があるのは間違いなく、その対応も待ったなしの状況にある。それをどのように考えるか。そして、今後、〜中略〜 外国人の数が増えるのは確実であり、多文化共生の問題を真剣に考えなればならないことも間違いない。
- 論文1
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多文化共生社会に生きる
長期的に日本に在留する外国人が増えていることは特筆すべきことであろう。それと共に家族滞在も増加しており、生活者として日本に定住する傾向が見られる。このように、国内外でのグローバル化が進行する中で、地域社会の中でも文化的多様性のある人々との共生は現代的・ 社会的課題である。
- INDEX
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- はじめに-在留外国人の増加と日本社会の変化
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地域社会における外国人と日本人住民の実態調査
―新宿区の場合 - 地域社会とコンフリクト
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コンフリクトをどのように考えるか
─葛藤解決方略の視点から - 外国につながる子どもたちと異文化受容態度
- ことばの問題の解消に向けて-やさしい日本語
- 多文化共生とはどのようなものか
- 多様性を考える─今後の課題に向けて
- プロフィール
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お茶の水女子大学基幹研究院教授。東北大学大学院文学研究科博士後期課程修了。
文学博士(心理学)。専門は異文化間心理学、異文化間教育学。異文化間教育学会元理事長(2013―2016年度)、同理事、多文化間精神医学会評議員、日本学術会議連携会員(24期)。
主な著書は『異文化間葛藤と教育価値観―日本人教師と留学生の葛藤解決に向けた社会心理学的研究』『多文化社会の偏見・差別─形成のメカニズムと低減のための教育』『多文化共生論―多様性理解のためのヒントとレッスン』『アジア諸国の子どもたちは日本をどのようにみているかー韓国・台湾における歴史・文化・生活にみる日本イメージ』『異文化間教育学大系2巻―文化接触のダイナミズム』等。
- 論文2
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人口減少社会日本を担う「外国につながりを持つ子ども」への教育支援
在留外国人の子どもたちの教育について、様々な取組が展開してきた1990年代以降の教育実践を概観し、その前提となってきた子どもの将来像と教育のあり方を描き出すことにある。そして、知見をもとに、次世代を担う子どもたちへの教育のあり方を考察する。
- INDEX
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0~14歳の在留外国人の子どもたちの
在留資格上の状況 -
求められる視点の転換
-「在留外国人/外国籍の子ども」から 「外国につながりを持つ子ども」へ -
「外国につながりを持つ子ども」という
視点を持つことで浮き彫りになる教育課題 -
「外国につながりを持つ子ども」への国による
教育支援 -
人口減少社会日本に生きる
「外国につながりを持つ子ども」への教育支援を
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0~14歳の在留外国人の子どもたちの
- プロフィール
- 東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。平成8年4月に群馬大学に教育学部講師として着任。平成24年6月より現職。専門は教育社会学。エスノグラフィの手法を用いて、生活者の視点から多文化共生のあり方を探る。不就学児童生徒の実態調査(大泉町教育委員会との共同研究)、在日南米人学校の全国調査(文部科学省委託研究)等の実態調査を企画・実施。文化庁国語審議会国語教育小委員会委員・地域日本語教育アドバイザー。「多文化共生推進士」の養成、留学生の就職促進、定住外国人への日本語教室、「観光日本語」教育実践等、国の事業費を導入してモデル事業を構築。
- 論文3
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外国人コミュニティとの共生
〜これまでの経緯とこれからの期待〜外国人によって形成されるコミュニティを「外国人コミュニティ」と呼び、これまでの経緯や日本社会で果たしている機能について、外国人住民とホスト側である日本社会との両面から論点を整理し、これからの多文化共生社会の形成における課題と可能性について論点の整理を試みる。
- INDEX
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- 外国人コミュニティとは何か
- 外国人コミュニティの歴史と変遷
- 外国人コミュニティの機能
- ホスト社会に求められること
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ソーシャルキャピタルとしての
外国人コミュニティ
- プロフィール
- 兵庫県伊丹市生まれ。1995年に阪神大震災で被災した外国人への支援を機に「多文化共生センター」を設立し、以来地域における多文化共生の推進に長年携わる。自治体国際化協会参事等を経て、2007年に「ダイバーシティ研究所」を設立。企業の社会責任や自治体施策を通じたダイバーシティの推進に活動を拡げた。東日本大震災直後には内閣官房企画官に就任し、現在も復興庁・復興推進参与として東北復興にも参画。明治大学大学院兼任講師。
- 論文4
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外国人から見た日本の多文化共生
日本の国際交流は、基本的に留学生などの帰国する前提の短期滞在者を誘って繰り広げられ、住民としての外国人は国際交流の蚊帳の外にいた。住民としての外国人と関係あるのは「人権」の場なのだと気づかされた。
- INDEX
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- 文化とは何か
- 文化とは“ちがい”である
- 多文化“共生”の多様性について
- 共生の現実
- 多文化共生と移民“問題”の因果について
- 日本での移民“問題”、起こりえるかについて
- 共生と共笑
- 矢は三本を束ねる、からの学び
- 三方良しとしての多文化共生
- 多数派ボケとは何か
- 共生の段階の順番とその功罪
- 違いの受け入れ、日本が不得意か
- 共笑を妨げる三つの壁
- プロフィール
- 羽衣国際大学教授。スリランカ生まれ。高校生の時に7万円を片道切符で来日。立命館大学、名城大学や龍谷大学で学ぶ。経済学博士号、日本国籍や僧籍を取得。全日本空手道連盟公認四段。初代社会人落語日本一決定戦で準優勝。株式会社グローバルコンテンツの代表取締役、山口県立大学准教授などを経て現職。タレント活動も行っておりテレビ・ラジオなどの出演や全国各地で主に多様性と包摂をテーマに講演活動を行う。オフィシャルサイト:nishan.jp
- 論文5
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在日外国人の社会的不適応
外国人が新しい地域社会に溶け込むには一定の苦労が伴う。これらはおそらく外国で生活した者なら誰もが大なり小なり経験があるであろう。そして、不幸にもそのような生活になじめずに種々のトラブルを抱えるのが、以下で論じる「社会的不適応」ということになる。
- INDEX
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- 外国人の社会的適応・不適応
- 海外の移民と社会的不適応としての犯罪の状況
- 外国人をめぐるトラブル
- わが国における外国人の犯罪
- 犯罪や非行などの社会的不適応を減らす方策
- プロフィール
- ケンブリッジ大学犯罪学研究所客員研究員、国連ローマ犯罪司法研究所(UNICRI)客員教授などを経て現職。早稲田大学・東京大学非常勤講師。旧日立みらい財団が1969年より刊行の「犯罪と非行」の編集委員として、長年にわたり犯罪や非行のないより良い社会づくりに貢献してきた。日立財団Webマガジン「みらい」編集主幹。