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interview

数学って、考える事なんです。
考えると、いろんな「答え」が見つかるんです。

理系の道=リケパスってどんなふうに歩むの? そんな疑問を、いま実際に歩んでいるセンパイに聞いてみました。お伺いしたのは社会人になって3年目の中島ミホさん。いまのあなたにきっと参考になることがあるはず。ぜひ読んでみてください!(公開日: 2018年11月22日)

【 中島ミホさんのリケパス 】
  • 共学の中高一貫校
  • 慶應義塾大学 理工学部数理科学科
  • 同大学院 基礎理工学専攻卒
  • 2016年 株式会社NTTデータ数理システム入社
共学の中高一貫校 慶應義塾大学 理工学部数理科学科 同大学院 基礎理工学専攻卒
2016年 株式会社NTTデータ数理システム入社

1. 第一歩

理系を目指すきっかけは?

父ですね。数学の教師をしていて家で私にも教えてくれたんですが、その教え方がとっても分かりやすくて、それで興味を持つようになりました。数学が好きだなと思うようになったのは中学3年、高校生ぐらいからでしょうか。図形をx軸とy軸の平面座標の上の点を線で繋ぐとか、向きと角度をベクトルで表すとか、数学のそういう考え方が面白いなって。高校では、数学の成績が良いと理系に進むんでしょ、という雰囲気でしたが、私は国語とか読書も好きだったので文系・理系どちらかを選択しないといけなかったのがすごく辛かったです。最終的に、文系に進んでしまうと数学の授業が減ってしまうので、それがいやで理系を選択しましたが、でもやっぱり文系・理系と分けないでほしかったな。

理系に進むにあたって、父も母も特に反対しませんでした。後輩の中には親や親戚から反対された人もいたらしいです。それと男子の方が「僕は数学ができる」というアピールが強いらしいんですね。そうなると女子はちょっと消極的になってしまって、「やっぱりやめとこうかな」ということもあるらしいです。

2. 進学

理系の大学生活はどうでした?

私が入った数学科は、40人クラスに女子は3人。そうなるとやっぱり、男子ばっかりでちょっと不安、という女子はいましたね。女子高から大学の共学の数学科に入ると、最初はすごいギャップがあるらしいんですが、最終的にはみんなけっこう馴染んでますよ。

それに、数学科の男性は女性にはすごく優しいんです。女性的な考え方を持っている男性も多い気がします。数学科特有のことなのか分からないですけど。「スイーツ食べにいこう」と男性の友だちから誘われたりしてました(笑)。

授業は、私が行った大学では一般教養で文系の授業も比較的自由に取れたので、文系の科目を取っていました。あとは、教員免許を取るつもりだったのでその必修科目も。言語学の授業とか面白かったですね。人間って話している時に相手が何を話しているのかを予測しながら話しているんですって。「さっきラーメン食べてきたんだけど」っていう会話で、それを聞いた人は「この人はラーメン屋さんに行って、そこでラーメンを注文して食べてお会計まで済ませて帰った」ということを、一瞬のうちに把握してるんですね。なので会話が成り立つ。そんなことを先生から教わって、そうか!と思いました。数学ですと数式やルールがあってこのときはこういう記号を用いる、と基本的にはきっちりと書かないといけないのですが、でも分かりきっていることは省略できることもあって、そういうところは言語の用法と似ているな、と思います。

3. 成長

大学・大学院でどんな研究を?

超越数論です。有理数係数の方程式の解にならない数が出てきてそれを超越数と呼びます。円周率のπは超越数の代表的なものです。πのように数字を概念として考えないと数式が成り立たない、そういう特殊な数字に関して考えていこうという分野が超越数論です。

πは3.141592…と無限に続きますが、分かっている限りでは、出てくる数字が偏りがなく同じくらいの割合で含まれていて、かつランダムに現れると言われている大変興味深い数列です。分からないので知りたい、といった単純な気持ちで、実際に学びはじめたら分からないことがどんどん出てくる。だからどんどん勉強して・・・という感じでしたね。

私が所属していた研究室では超越数論に関して学ぶことが主だったので、もう少しやりたいと思い、大学院に進学しました。大学院では、自主的に研究をして発見して、それを最終的に論文にまとめますが、そこまではやりたいと思って。大学や大学院では、分からないことを追求することの楽しさを知りました。目で確認できないことに対して理論で突き詰めていく、そのための想像力を得たともいえます。

4. 分かれ道

就活はどうでした?

理系、あるいは数学科卒ということが就職のネックになったかというと、それはまったくなかったです。いずれ社会に出ることを前提にして数学科で勉強していって、かつ、学んだことをしっかりと表現できればぜんぜん大丈夫だと思います。自分がどんなふうに進路を決め、どんなふうに勉強してきたか、それをきちんといえると言うことが社会では重視されるように思います。ですので、専門科目や専攻には関係がないかなという印象があります。もちろん自分の学科や就職したい先にもよると思うんですけれども、「数学科に行ったら就職先が見つからない」とかよく言われているみたいですが、実はそんなに障害にならないと思います。それに、もともと数学科で勉強したことが仕事に直接使えるとは思ってはいなくて(笑)、数学と就職は切り分けて考えていました。学部4年生のとき、この先大学院へ進学しようか就職活動しようか迷ったことがあって、そのとき世間や企業では論理的な思考力が注目を集めていて、そういう力があれば結構いろんな会社に入れるんじゃないかと、百貨店など一般的な会社も受けました。でも結局、数学から完全に離れてしまうと面白くないと思ったんですね。少しでも数学に近いところ、数学に関係する仕事がしたいと思って、それでいまの会社を受けました。

5. 社会へ

今のお仕事はどうですか?

テキストマイニングのソフトウェアを開発しています。テキストマイニングというのは、文章を単語や文節で区切って、どんな言葉が出てきて、それはほかのどんな言葉と関連しているかといったことを解析することで、そのソフトウェアを開発しています。例えば特許関連のテキストをマイニングすると、どんな分野でどんな目的の特許が多く出願されているかが分かります。私が大学で身につけてきた論理的な考えは、プログラムを書く場面や、ソフトウェアの機能を組み立てていくときなどに活かされていますね。興味があった言語学などにも関係していますし。このソフトウェアで分析した結果には、文章から抽出された単語が表示されます。単語が適切に抽出されているのか、分析者が望む形であるのか、という観点で何千件、何万件の単語を一気に確認しますが、ちょっとおかしい、合わないのでは、といった確認作業をひとつひとつ行いながら、それをルール化し、プログラムに落とし込んでいきます。私が関係したプログラムがリリースされ、それを使っていただいたお客様から良い評価を頂いたときがすごく嬉しかったですね。バージョンアップで私たちが注力したところ、新機能だったり、処理スピードだったりが評価され、しかもそういう声をお客様から直接お聞きしたときなどは嬉しいですよ。

この仕事に対する満足度ですか?かなりあります。この仕事は問題解決のために考えることがたくさんありますが、考えること自体が楽しいんです。好きでこの仕事をしている感覚がありますし、それこそずっと考えています。もちろん考えがなかなか先に進まない時もあったりはするんですけど、でも大学・大学院を通して考えることを鍛えてきましたので。

6. 後輩へ

後輩へのメッセージをお願いします

高校までの数学にあまりとらわれないでほしいと思います。高校までの数学は、どうしても試験やテストがあって、この問題はこういう解き方が正解だとかが点数として評価されるじゃないですか。それで正解の解き方が分からないと、ついつい難しいとか自分に合わないと思って嫌いになってしまう。問題を解くことだけが数学ではないんです。数学の世界って、かなり自由なんです。矛盾がない限り自分でルールを決めて問題を解き進めていくことができる。なぜこの公式が成り立つの?、なんでこの答えが出てくるの?、そういったときの「なぜ?」を考えて突き詰めることが面白いんです。超越数は面白いと思って、突き詰めたいと研究したら私はとても面白かったように。それが何かに役立つ、というわけではないんですが(笑)。そういう「なぜ?」の部分を自分の中でどんどん膨らませて追求していける。これって本当に正しいのかな?とか、なんでこれが正しいんだろう?、それを証明したりあるいは証明できなかったり、あるいは、証明ができないことが証明できた、なんてちょっとことば遊びみたいですが(笑)。そういうふうに自分なりに考えて、自分なりに答えを出せることが数学の面白さです。そして、そんなふうに突き詰めていくこと、考えることが当たり前になれば、それは就職にも活かせます。考えることが楽しければ、仕事も楽しくできます。

中島さんの一品 姉からもらった就職祝いの万年筆

考えたことを記すとき、大切なことを書くとき、必ず使います。
この万年筆で書くことで考えもより整理されるような気がするんです。