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多文化共生社会の構築シンポジウム「おもてなしの心を超えて」 多文化共生社会の構築シンポジウム「おもてなしの心を超えて」

2020年1月26日(日)、日立シビックホール(日立市)において、多文化共生社会の構築シンポジウム「おもてなしの心を超えて」を開催しました。
近年、さまざまな場面で耳にする「おもてなし」ですが、私たちは地域で暮らす外国人の方に対して心からの「おもてなし」ができているでしょうか。
本シンポジウムでは、そうした日本の共生社会の現状について考えるとともに、一人ひとりが意識すべきことや変わるべきことなどについて4名の講演者の方にそれぞれの視点から語っていただきました。

講演の様子

サヘル・ローズ氏

基調講演

「夢をつなぐ 心をつなぐ」

サヘル・ローズ氏(女優)

基調講演では、女優・タレントとしてテレビやラジオなどで活躍されているイラン出身のサヘル・ローズ氏に、「夢をつなぐ 心をつなぐ」と題して語っていただきました。8歳の時に養母と来日したサヘル氏は、その後住むところや食べるものがなく公園で暮らしたり、その状況を見かねた給食の「おばちゃん」の家に居候させてもらったり、小学校の校長先生に日本語を教えてもらうなど、さまざまな経験をしてきました。そうした苦難の日々を乗り越えてきたサヘル氏からは、「外国人という一つのくくりで全ての人を見ないでください。ネットなどの情報に惑わされずに、目の前にいる人と対話して、その人の存在を感じ取ってもらえるとうれしいです」というメッセージをいただきました。

アンジェロ・イシ氏

講演録

「心の壁、言葉の壁、法の壁を考える」

アンジェロ・イシ

武蔵大学 社会学部メディア社会学科 教授

サンパウロ市生まれの日系ブラジル三世であり、自称「在日ブラジル人一世」のアンジェロ・イシ氏は、1990年に留学生として来日して以来さまざまな研究や活動を通じて多文化の共生というテーマにかかわってきました。その見識と自らの体験から、日本の社会にはまだ、外国人を短期滞在者や観光客として見る「国際交流」から、社会の一員として考える「多文化共生」への意識改革が浸透していないと指摘されていました。そのうえで、外国人との共生や協働にいちばん必要なのは「足し算」と「掛け算」の論理で、外国人と日本人のどちらかが合わせるのではなく、お互いが歩み寄ることの相乗効果で心の壁、言葉の壁を崩していくことが大切であるという提言をいただきました。

唐沢 穣氏

講演録

「心の壁と格差社会」

唐沢 穣

名古屋大学 情報学研究科 教授

名古屋大学で社会心理学を研究されている唐沢穣氏には、その主なテーマである「偏見はなぜ生まれるのか」という観点から、人間なら誰もが持っている心の働きである「認知的節約」が心の壁をつくる要因の一つになっているというお話をいただきました。そのなかでも、知識や理解の基本であるカテゴリー化と、目立つ事柄や思い出しやすい事柄は実際より多く起きているように感じやすいという原則を取り上げ、本来は私たちが効率的に情報処理を行うためのメカニズムが過度になると無意識による偏りを生む原因にもなるという功罪を説明していただき、そうした誰もが持っている危うさに気付くことが解決の第一歩につながると学術的な立場からの提言をいただきました。

鈴木 哲也氏

「外国人の生活支援について」

鈴木 哲也

公益財団法人 茨城県国際交流協会 理事長

茨城県国際交流協会は、県内在住の外国人向けに、コミュニケーション面での支援、各種相談の受付、災害や緊急時のサポートなどを展開しています。鈴木理事長から、国内の外国人の状況(国籍・年齢・労働者数など)や行政の取り組みの紹介を交えて、県内の国際交流活動について説明していただきました。

お問い合わせ

公益財団法人 日立財団
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