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公益財団法人 日立財団

多文化共生社会の構築シンポジウム「日本社会における多文化共生社会実現の壁」〜心のグローバル化〜多文化共生社会の構築シンポジウム「日本社会における多文化共生社会実現の壁」〜心のグローバル化〜

講演の様子

2019年11月4日(月・祝)、アキバプラザ(千代田区)において、多文化共生社会の構築シンポジウム「日本社会における多文化共生社会実現の壁〜心のグローバル化〜」を開催しました。
日本で暮らす外国人は、近年増加の一途をたどり、その数は、 266万人に達し、総人口に占める割合は初めて2%を超えました。日本は今後着実に進む人口減少により、人手不足は顕在化しており、外国人就労者への期待は高まっています。
本シンポジウムでは、日本における多文化共生社会の現状と、日本人のメンタリティからみた「心の壁」について追及し、心のグローバル化を図るために何をすべきかを考えました。

サヘル・ローズ 氏

基調講演は、女優・タレントとしてテレビやラジオなどで活躍されているイラン出身のサヘル・ローズ氏を迎え、「夢をつなぐ 心をつなぐ」と題し講演していただきました。8歳の時に養母と来日し、住むところや食べるものもなく、数日間を公園で過ごしたことや、その状況を見かねた、給食の「おばちゃん」の家に居候させてもらったこと、校長先生に日本語を教えてもらったことなどを話すと、会場からはすすり泣きの声も上がっていました。最後に、サヘル氏から、「国籍や肌の色、イメージだけで判断しないでください。ニュースだけが全てではありません。一人ひとりの意識から変えて欲しいです」と共生社会を築くためのメッセージがありました。

パネルディスカッション

後半は、共同通信社社会部の山脇絵里子副部長をモデレーターにお迎えし、3名のパネリストにお話しいただいたあと、パネルディスカッションを行いました。

毛受 敏浩 氏

パネリスト

毛受 敏浩 氏

公益財団法人
日本国際交流センター
執行理事

アンジェロ・イシ 氏

パネリスト

アンジェロ・イシ 氏

武蔵大学 社会学部
社会学部メディア社会学科
教授

唐沢 穣 氏

パネリスト

唐沢 穣 氏

名古屋大学 情報学研究科
教授

山脇絵里子 氏

モデレーター

山脇絵里子 氏

一般社団法人 共同通信社
社会部
副部長

山脇皆さん、こんにちは。共同通信社会部の山脇と申します。今日はよろしくお願いいたします。私は社会部の記者として長い間、女性への暴力、子供への虐待、そういった弱い立場の人たちの権利を守るということに取り組んできました。実は3年前に、日立財団のWebマガジン「みらい」のインタビューを受けました。その時に、増えていく外国人の方たちとの共生、特にサヘル・ローズさんのように幼い時に来日する子供たちの権利擁護にぜひ取り組んでいただきたいと注文を受けました。そうしましたら日立財団の方は大変真面目で、3年かけて準備をして下さって、今日こうしたシンポジウムを開いてくださいました。そのご縁でモデレーターを務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。今日のパネルディスカッションは、外国人との共生というテーマはあちこちで取り上げていると思うんですが、心の壁、心のグローバル化というテーマを取り上げるのはなかなかユニークな試みだなと思っております。そしてパネリストの皆さまは、さまざまな分野からご専門家に来ていただきました。皆さん御存じの通り、政府は介護や建設、農業といった分野の人手不足に対応するために、今年4月から外国人労働者の迎え入れを拡大する新たな制度を始めました。日本で暮らす外国人の方たちはもう260万人を超えています。そして新たな在留資格で今後さらに増えることが予想されます。一方で外国にルーツを持つ隣人たちと私たち日本人の間に心の壁があるんじゃないかと感じていらっしゃる方が、今日この会場にもたくさんご来場下さっているのではないかと思います。事前の申し込み時にコメントをいただきました。たくさん、ありがとうございました。その中で、多文化共生について「受け入れ側の私たちの意識が整っていないんじゃないか」「意識改革が大切なんじゃないか」と書いて下さった方もいらっしゃいました。今日はそういったテーマで、専門の皆さんからご意見を伺いながら、皆さんと一緒に、一人一人、心のグローバル化のために何ができるのかを話していきたいと思います。進め方ですが、まずパネリストの皆さんに自己紹介を兼ねて10分ずつ、感じている問題意識やご専門を紹介いただきたいと思います。その後に日本人のメンタリティーや外国人との共生について議論を交わしていきたいと思います。では、日本国際交流センター執行理事で、日本で多文化共生を語る上では第一人者でいらっしゃいます毛受敏浩さんからまずお話をお願いいたします。

毛受 敏浩 氏

毛受ただいまご紹介いただきました、日本国際交流センター執行理事をしております毛受敏浩と申します。
私が勤めております日本国際交流センターは、純粋な民間の非営利団体で、来年で50周年を迎える、日米交流からスタートした歴史のある団体です。
私はこの団体に勤めて30年近くになるのですが、その前は、県庁の職員をしておりました。そこで地域の草の根の国際交流からスタートし、2005年頃から、地域に住む外国人の方々に関心を持ち多文化共生として活動をしてきました。

私の著書で、2011年に『人口激減』という本を出しているのですが、「移民は日本に必要である」というサブタイトルがついています。外国人との多文化共生について関心を持ち始めたころは、まだ人口問題についてあまり深刻な議論は出ていませんでした。その中で外国人と日本人はどうやって多文化共生をやっていけるのかが、テーマでしたが、時間がたつにつれて人口減少が日本にとって最大の課題となりました。今後どのような状況になるのかちょっとお話しさせていただきます。今おきている人口減少は、まだ、ジェットコースターでいうと一番頂上からちょっと下に下ったところです。日本の将来人口を出している、国立社会保障人口問題研究所によると、2020年代は、550万人減ると予想しています。550万人とはとのような数かというと、四国の人口が380万人なので、10年以内に四国がなくなるぐらい人口が減ることになります。30年代、40年代とさらに減って、2065年になると1年間に100万人減り、その10年間で1000万人減るということになります。
広島県の山間部の人口3万人のある町の将来の人口は、2035年にはその町で一番多い年齢層が、80歳以上になります。この町が特殊な町ではなく、日本の人口10万人以上の町はみんなそうなります。市町村だけじゃなくて、県レベルだと、秋田県の人口減少も深刻な状況となっています。

日本は大変自然災害の多い国で、今年も台風の被害で多くの犠牲者がでてしまいました。被害に遭われた方は高齢者が多く、高齢者同士が地域で助け合い生活していますが、そのような状況に、国籍を問わず若い人たちが労働者として地域社会にいてくれたら、地域としても安心で、高齢者を守ってくれます。外国人の方たちを、一時的な労働者としてではなく、定着していただき、日本で子供を育て地域社会を担ってもらわないと、地域は守れません。高齢者の割合は増え続け、2060年には日本の人口が8,674万人となり65歳以上の高齢者が総人口の4割になるといわれています。すでにこの10年間で5000校の学校がなくなり、それぐらいの勢いで少子化が進んでいます。

テーマにもある、心の問題についてですが、これまで外国人の方が増えると治安が悪くなると言われてきました。ヨーロッパの例を見ると、移民・難民がたくさん押し寄せているような状況に日本がなったらどうするのか。ヨーロッパは、破綻した国から大量に脱出せざるおえない人たちを、ドイツが積極的に受け入れたところ、国内で問題がおこってしまったわけですが、日本の置かれている状況は全く異なります。日本は人口が減る中で、どのような受け入れをすればいいのか、今、議論を行っています。治安面では外国人犯罪は2005年がピークで、そこからずっと減り続けているのが現実です。これからは客観的な数字を元に、人口減少の日本の持続性を維持するためにも、外国人の受け入れを考えていくところに来ていると思います。

山脇毛受さん、ありがとうございます。本日は、東京以外の遠方から沢山の方にご参加していただいております。外国人の方々は、都会だけに住んでいるのではなくて、地方の農業や漁業や建設、東日本大震災の被災地の復興などは多くの外国人の方に支えられていることを念頭に置き、私たちは「共生」について考えるべきだと思います。
それでは、武蔵大学社会学部 教授 アンジェロ・イシさんは、ブラジル・サンパウロ生まれ、日本の移民やメディアを研究する一方でジャーナリストとしても活動していらっしゃいます。どうぞお願いします。

アンジェロ・イシ 氏

アンジェロ皆さんこんにちは、よろしくお願いします。アンジェロ・イシと申します。アンジェロがファーストネームでイシがファミリーネームです。ブラジルのサンパウロ出身です。どうぞ、ブラジル流にファーストネームを呼び捨てでアンジェロというふうに覚えて、呼んでいただければと思います。よろしくお願いします。
こちらのパネルをご覧下さい。
7月の朝日新聞に『フロントランナー』という枠で私が紹介された記事です。私はフロントランナーでも何でもなく、もしかしたら孤独なランナーかもしれないと思っていて、なぜそのように思っているのかも含めて、自己紹介をさせていただきます。こちらの記事の背景写真は、愛知県豊田市にある有名な保見団地というところで、住民全体の半数近くが外国人で、その大半がブラジル人という団地です。いろいろと異論があるかもしれませんが、そこはもう移民社会そのものだと思います。
なぜ私が孤独なランナーなのかというと、私は日系ブラジル人3世で、つまり祖父母が戦前に日本からブラジルに移民し、そこで私の父親、母親が生まれ、両親はブラジル生まれの日系2世となり、その息子の私はサンパウロで生まれで、つまり最初に移民した1世の孫ということで、日系ブラジル人3世となります。私は1990年に、その当時非常にブームになっていた南米から日本への出稼ぎに来る人たちを研究しようと、日本に留学しました。
当初、出稼ぎは2〜3年日本で働いてブラジルに帰るだろうと言われていたのですが、私がインタビューしていた人たちは誰ひとりとしてブラジルに戻らなかったので、彼らをずっと追っている私自身も日本にいることになったわけです。
ある時期、私はひらめきました。私はもう日系ブラジル人3世じゃないんだ、これからは、意識的戦略的に自分のことを在日ブラジル人1世と自己紹介をしようと決めました。その狙いは非常にシンプルで、日本社会に対して、私はもうブラジルに帰るつもりはない。自分はお客さんではなく、日本社会の、チームニッポンの一員として見てもらいたいというメッセージだったのですが、「在日ブラジル人1世」を普及させ流行語にしようと思った私の壮大な計画は、失敗の連続で、同じブラジル出身の日系ブラジル人3世で、私から見ると正真正銘の在日ブラジル人1世である私の妻でさえ説得できてなかったのです。そして、7年前に娘も、東京の病院で生まれたにもかかわらず、日本の国籍と日本のパスポートを自動的にもらうことができませんでした。この東京で生まれた移民の2世である娘の親として私は正真正銘の1世になり、さらに在日ブラジル人1世としての自覚が強くなりました。と同時に、私は、来年の東京オリンピックに向けて、勝手に「東京五輪ホスト宣言」をしています。私たちは、もはや日本に、受け入れられるとか迎えられる人間ではなく、皆さんと一緒に東京五輪でホストとして色々な国から日本に来る人々を迎えて、東京五輪を成功に導きたいの一員であることを認めてもらいたい事を、主張している訳です。
もう1つ問題提起をしておきます。成田空港に、国を挙げて、「ウエルカム・トゥ・ジャパン」すなわち、「日本にようこそ。いらっしゃいませ」という19のそれぞれの国の言語で表記されている中に、ポルトガル語が入っていないんですね。19カ国語もあるにもかかわらず。先ほどの保見団地や、豊田市とか愛知県に、ポルトガル語をとする多くの方や、言葉の壁を感じている方もいるのに、なぜ従来型の国際交流マインドなのか。あるいはもっと具体的に言えば、国を挙げて外国人観光客を多く日本に呼びたいのに、ある意味インビジブルで取り残されてきたのが、日本にいる人々であるということも皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

山脇アンジェロさん、ありがとうございます。今日は、アンジェロさんがシンポジストとしていて下さることがとても大切だと思っています。日本の社会が外国人を短期滞在者、観光客としか残念ながら見てこなかったということが、今日のこの集まりが必要になった一つのきっかけというか、問題点だなというふうに感じています。アンジェロさんからのご提言をいただきまして、「我が国」と言うと外国籍で一緒に住んでいらっしゃる方が疎外感を感じるということで、我が国ではなくて「この国」。そして外国人の「受け入れ」は「迎え入れ」というふうに呼んだらどうかという提案をいただいているので、きょうはそんな感じで進めていきたいと思います。ありがとうございます。
続きまして、社会心理学がご専門の、名古屋大学 唐沢穣教授です。よろしくお願いします。