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公益財団法人 日立財団

多文化共生社会の構築シンポジウム「日本社会における多文化共生社会実現の壁」〜心のグローバル化〜多文化共生社会の構築シンポジウム「日本社会における多文化共生社会実現の壁」〜心のグローバル化〜

毛受 敏浩 氏

毛受日本は島国で単一民族的な色彩が強いと言われてきました。以前は、一般の方が海外と交流することがなく、海外の情報はメディアから発信されている内容しかなく、日本人は、自分たちと違うものに対して「恐怖心」や「警戒心」をいだき、外国人は怖いとう思いでしたが、けして日本人が世界の人たちと比べて「外国人嫌い」とか、偏見が強いという訳ではないと思います。
例えばヨーロッパは色々な国の人が暮らしていますが、宗教的な根深い対立もあり、なかなかうまくいかないこともありしたが、一方、日本は歴史的に色々な文化や制度を海外からを融通無碍に受け入れてきました。将来絶対に起こらないと言いえませんが、宗教上そのような対立も起っていません。むしろ、日本人は包容力があるように見られるケースも多いと思います。例えばフィリピン人の女性が日本人と結婚して農家で生活をするようになったとき、日本語が話せない状況を見て、近所のおばあさんが一生懸命面倒を見てあげたり、困っている人に親切にすることは、日本人であれば普通にあるわけです。それを考えると、私は日本人が特に、「おもてなし」とか、あるいはそういう特別な言葉を使わなくても、日本人は親切だし、外国人の人が困っていれば助けてあげるということは普通のことです。サヘルさんの話にあったように、一般の人が普通に持っているものだと思います。ただそれがなかなかできないのは、「シャイ」なところがあることも理由でしょう。日本人同士も、隣人とコミュニケーションをとらない社会になっているので、それが表に出てこないということもあると思います。それを踏まえて手を差し伸べられるかどうかということです。
2015年に新宿区が日本人と外国人に対してアンケートをとりました。
「日本人による外国人に対する偏見差別意識があると思いますか」という質問の回答が、5割強の外国人の方が、差別意識があると答え、特に、家を借りるときに外国人はなかなか部屋を貸してもらえないと感じると言う意見でした。
そこで、新宿区の「多文化共生まちづくり会議」では2年間かけて、家を借りることだけをテーマに議論しました。大家さんと、外国人の方、不動産屋業者の方にも来ていただき話合いました。するとそれぞれから意見が出てくるんです。外国人の方たちは、こんなに困っているという話や、大家さんからも、1人の人に家を貸してたら実は7人で住んでいたとか、本来はオフィスのはずが実は風俗営業していたとか、学生に家を貸していたら、いつの間にかいなくなり、家具は置いたままになっている。実は家具って大家さんは本人の承諾がないのに勝手に家具の処分はできないので、部屋がずっと貸せないままでお金が入ってこない。このようなケースが色々でました。「じゃあどうしたらいいのか」という話しでは、「外国人だからという理由で家を貸さないということは絶対に言いません。」ということを徹底すると同時に、借りる方に対しても、「日本ではルールがあり、それに従ってもらわないと困る。」ということを徹底する。つまりお互いのコミュニケーションと、一定のルールを理解することで、問題解決に繋がりました。
このように、新宿の取組みのような先進地域の事例を外国人が増加している全国各地に広げる仕組みがあるとよいと思います。

山脇ありがとうございます。冒頭申し上げましたように、いまや地方が外国人の方たちを求めているという状況がありまして、入居差別や、今日のテーマにはなっていませんけれども、例えば地方の小学校にベトナム人の子どもが1人だけ通っているとか、ポツッポツッと外国の方たちが暮らしていて、その方たちをどう孤立させないかというのが大きなテーマになっていると思います。お話を戻しまして、おもてなしというのが今日のもう一つのテーマとお話をしましたが、サヘル・ローズさんのお話の中で、給食のおばちゃんの「おせっかい」に助けられたというお話がありました。もともと日本人には「おもてなし」や「おせっかい」というメンタリティーもあるかと思うのですが、これについて、アンジェロさんはどのようにおもわれますか。

アンジェロ私が1990年に日本に留学したときは本当にうれしい体験の連続でした。日本人の「おもてなし精神」の恩恵をいっぱい受けました。その後、日本に「定住」や「永住」する外国人の研究を進めていくうえで、また違う日本人の側面も見えてきました。いわゆる期間限定の何日から何日までの何日間、つまり観光客として短期で日本にやってくる人たち、あるいは1年でその国に帰る留学生などに対しての、「おもてなし」は、日本人以上におもてなす国民は世界中を見渡してもいないと思います。そして、次の課題は、一歩前進して、定住・永住する外国人を、日本社会の一員として、「おもてなし」をする気持ちを育むことが課題です。
先ほど、山脇さんはサヘルさんの話を聞いて、「心を打つ話だった」とおっしゃいました。多くの日本の皆さんは外国人について頭で理解をしても、それが心の壁を解消するとは限らないわけです。つまり頭で理解するだけではなくて情的理解によって、日本に住む外国人の気持ちをどのぐらい私たちが理解できるか。その人の立場に立って物事がどのように見えているのか。想像力を私たちが働かせることができるかということです。サヘルさんのお話を聞いて、日本に住む一人の人間がどういう気持ちなのか、彼女が何をどう思ったのか、どのように見えていたのかを、一生懸命に相手の気持ち理解することによって、得るものが沢山あったのではないでしょうか。あと、もう一点あるのですが、意識啓発です。2005年に総務省が、国として初めて多文化共生というキーワードで研究会を立ち上げた時の、メンバーとして色々な課題について一つ一つ整理していく中で、私が主張したのは、地域住民の意識啓発をどうするのかいうことでした。日本人だって情報弱者で、外国人について理解と情報が不足して、ある意味情報弱者と呼べます。要するに、彼ら彼女らが、どのように意識啓発を進めていくべきなのかという点をすごく強調しています。

山脇ありがとうございました。本日、会場にいらした皆様は本当に「意識啓発」「意識改革」をしなければいけないという気持ちの方が集まって下さっているのだと思います。サヘルさんがおっしゃった、「歩み寄る一歩から変わる」というお言葉がありました。これもすばらしい言葉だと思います。「誰かがやるだろう」じゃなくて一歩歩み寄って、「大丈夫?」と声をかけるということから始まると思います。会場の皆さんは、既にやってこられて、さらに次にどのように社会を変えていけばいいのかという問題意識も持っていらっしゃると思います。では心のグローバル化を実現するにはどうしたらいいのかということをお話ししていきたいと思います。
毛受さんが最初に言って下さった通り、日本は少子高齢化に直面して、外国人の方たちの働きがなければ社会として立ち行かない。仕方がないから外国人を受け入れるんじゃなくて、皆さんが来て下さるからこの社会が成立しているんだということをきちんと認識することから始めなければいけないと思うんです。今や世界の国々で労働力を奪い合う時代ですので、この国に来たらハッピーに暮らせるか、それとも嫌な思いをするのかということを、どの国の方たちも見ています。そういった点では、私たちの国に来ている外国の方たちとどう一緒に暮らしていくかということが問われていると思うんですが、心のグローバル化について毛受さん、もう一回改めてお願いします。

講演の様子

毛受各国で労働力の奪い合いというお話がありましたが、私は、韓国に何回か調査に行ったのですが、韓国は外国人の受け入れ制度が非常に整っていました。心の壁で言うと、5月21日が、国の法律で、「世界人の日」をつくっているんです。「世界人の日」とは、移住してきた人たちと、韓国の人がともに一生懸命やっていきましょうという日です。日本では、名古屋市とか北九州市で、「多文化共生月間」をつくったりしています。外国人の人たちは日本の中で、必要不可欠な存在になっていると思いますが、残念ながら一般の人からするとあんまり可視化されていないんですね。よくわかっていない。多分皆さんご自身の住んでいらっしゃる市とか区に大体何人ぐらい外国人がいるかというのは、おわかりかもしれません、あるいは何カ国いるかということがおわかりかもしれませんが、そういう人たちが実際にどういう職場でどんな暮らしをして、どういうところで働いてどういう暮らしをしているのかというのはあまりわからないんですね。私は新宿区の方に言うんですけども、人口の12%が外国人で、しかも学生が多いのは皆わかっているんですけれども、新宿区の中の産業で重要な役割を外国人はどのように果たしているのかと。つまり、この人たちが具体的にどのような分野でどういう仕事をしているのか。あるいは外国人の人たちが新宿区の税収をどれだけ支えているのかということですね。それが実はあんまり明らかになっていないんですね。ですから、地域の中で実は外国人がいなくなると困る、絶対に必要な存在のはずですけれども、それを目に見える数字でこれだけの貢献をしてるんだということを具体的に見せていくということが日本人の人たちにとってわかりやすいのではないかなと思います。

山脇ありがとうございます。今日は心をテーマにしているのであまり制度の話はしませんが、実は制度面の問題点も多々ありまして、それはここにいる皆さんも感じていらっしゃると思うのですが、例えば技能実習生は家族の帯同を認められていない。新たに出てきた特定技能の資格もそうですけれども。家族を連れて来ていれば地域の保育園や学校に通わせて、親同士の交流ができたり、地域に入っていったりする訳なんですけれども、単身でいらっしゃる技能実習生の方たちはどうしても職場の中にいて、働いている姿がなかなか見えないという問題もあると感じています。制度の問題は改めてやりたいと思うんですけれども、なかなか外国人の姿が見えてこないというのはアンジェロさん、いかがですか。